コロナでライフシフトした男女4人「夏物語」 収入減って幸せ、夢を追求することにした…

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一方、ケント大学で人材管理・組織行動論の講師を務めるマイケル・コッホは、多くの人にとって安定した仕事への転職は難しくなる、と話す。再訓練や追加の教育が必要になるだけでなく、大量に存在するほかの失業者との競争にもさらされるためだ。

「コロナの結果、(インターネット経由で単発の仕事を請け負う)ギグエコノミーがさらに拡大する」とコッホは言う。再びロックダウンとなっても柔軟に対処できるよう、企業が短期の雇用契約や非正規人材の活用に力を入れるようになるのは間違いない。イギリスにはすでに470万人のギグワーカーがいる。

カシム・ミルザ(45)は個人経営の運転手として15年間働いてきた。ウーバーなど配車アプリとの競争を生き抜き、ロンドンの増え続ける道路規制や渋滞税を乗り切ってきた。昨年、ミルザはローンを組んで6万5000ポンド(約900万円)のメルセデス・ベンツを購入した。イギリス国内旅行や空港送迎、観光ツアーで雇ってくれる、主に海外からの顧客の期待に応えようとしたのである。

だが、今回のコロナ禍でミルザは何重にも痛手を負った。出張客や観光客は激減。世の中では在宅勤務が広がり、運転手を雇って街中を移動するビジネス客もいなくなった。ミルザには養うべき両親とパートナー、2人の子どもがいるが、3月以降は基本的に自宅待機の状態が続いている。

「私にとっては、とんでもない災難だ」とミルザ。「出口戦略を見つけようと、必死でもがいているところだよ」。

救いも多少はあった。毎月1000ポンド(約14万円)の自動車ローンの返済は8月まで待ってもらえたし、4月から受け取っている自営業者向けの給付金も総額で6000ポンド(約83万円)になる。

運転手の仕事を廃業するかどうかの決断は、8月いっぱい待つつもりだ。運転手としては「経験豊富」でも、「書類で証明できる技能は何もない」と言う。警備業界で働くことも視野に入れながら、他の仕事の可能性も探っている。

ミルザは言う。「私はこの車にとことんつぎ込んでしまって、基本的に借金で首が回らない。そんな人間はどうすればいいんだろう」。

(執筆:Geneva Abdul記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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