原発「国会事故調」パパのグローバル教育 震災の真実を語れない日本人でいいの?

✎ 1〜 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 10 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

石橋さんが次男から「あなたは何をしましたか」と問われたのは、活動期限を約半年と決められた国会事故調の折り返し期。怒濤の調査、分析活動が続き、終電帰りなら早いほう。必死に取り組んでいた石橋さんだったが、冒頭のように、小学生の息子さんからのシンプルな問いに答えられず、言葉に詰まった。

「この問題は自分ごとなんだ」。息子からの問いかけで、石橋さんはやっとそれに気づいたという。なぜなら、「小学生の息子にとって“大人”とは、“自分”以外の誰でもないから」だ。

「事故再発を防ぐ世の中を作るのは、自分を含む国民一人ひとり」「それぞれにとっての『自分ごと』にするには、この報告をわかりやすくする必要がある」。そう悟った石橋さんは、2012年秋、志を同じくする友人や大学生と一緒に、手弁当で「わかりやすいプロジェクト 国会事故調編」を作った。

若者たちも感じる、「考えない」ことへの危機感

石橋 哲(いしばし・さとし)
1964年和歌山県生まれ。1987年東京大学法学部卒、日本長期信用銀行入行。シティバンクN.A.、産業再生機構を経て、クロトパートナーズを設立、主に事業会社における事業・組織再構築にかかる計画策定・意思決定工程の支援面で活動中。 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調) に調査統括補佐として参加、プロジェクトマネジメントなどを務めた。現在、吉本興業経営戦略アドバイザー、日本赤十字社 赤十字原子力災害活動ガイドライン作成研究委員会委員などを務める。

「福島原発事故に対して、これまで『大人世代』が何をしてきたのか。問題をどうとらえ、どう反省するのか(あるいは反省しないのか)を、正しく伝えることは、『将来世代』に残せるひとつの“遺産”になる。日本が、将来世代に生活基盤を置く国として選ばれるためにも必要な条件」。石橋さんはわかりやすいプロジェクトの設立時に、そう語っている。

メンバーのひとりの学生は、参加の動機をこう語る。「国民一人ひとりが難しいトピックについて知識を持たない、考えない、議論しないという状況に危機感を抱いています」(同プロジェクトウェブサイトより)。政府やメディアなどの権威が発する情報を、そのまま信じたり、聞き流すことへの危機感を若い世代も抱いているのだ。

「事故は防げなかったの?」「原発をめぐる社会の仕組みの課題って何?」――。

「わかりやすいプロジェクト」は、私たち大人が今なお、きちんと説明できない、こうしたシンプルな問題について考えるきっかけを提供しようとしている。たとえば、上記などの問いに関する6つの「イラスト動画」を日本語と英語で公開している。親しみやすいタッチは世界で人気の学習サイト、カーン・アカデミーのようだ。

世界で通用する人になるために、必要な要素

今年1月、日本を訪れたハーバード・ビジネス・スクールの学生約30人は、帝国ホテルで黒川清氏(国会事故調委員長)の話を聞き、このイラスト動画に見入った。

次ページ「考える」子どもにするために、重要なこと
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事