子ども被災者支援法"骨抜きバイアス"の実態 英文の勧告を誤訳、健康調査拡大を先延ばし
日本語では「避難区域の」を追加
この報告書に対し、外務省は次のように対応した。
2013年6月11日付けで「グローバー健康の権利特別報告者訪日報告書・補遺・仮訳」という文書をホームページに掲載。その中で、グローバー氏による勧告内容の記述を「1ミリシーベルト以上の放射線量の避難区域の住民に対して、健康管理調査が提供されるべきであること」と日本語に訳したうえで、対策について「実施済み」と明記した。
ところが、である。今年3月20日に参議院議員会館内で開催されたグローバー氏を招いての「院内勉強会」で、市民グループの一員として出席した河崎健一郎弁護士(福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク)から「原文を意図的に誤訳している」と指摘が持ち上がった。
グローバー氏の勧告の原文が、「1ミリシーベルト以上の放射線量のすべての地域に住む人々に対して、健康管理調査が提供されるべきであること」(The health management survey should be provided to persons residing in all affected areas with radiation exposure higher than 1 mSV/year.)となっていたのに対して、外務省は「1ミリシーベルト以上の放射線量の避難区域の住民に対して、健康管理調査が提供されるべきであること」と翻訳。日本語訳には、原文にはない「避難区域の」を付け加えてあるのだ。「意図的な誤訳だ」と河崎氏は追及した。
勉強会に出席した外務省の山中修・総合外交政策局人権人道課長は「通常、文書は主管官庁と一緒に翻訳している。内容にかかわるものは主管官庁の了承を得て直している」と説明。これを受けて、同じく市民グループのメンバーとして参加した満田夏花・FoEJAPAN理事が、外務省と主管官庁の環境省に対して「きちんと文章を直して下さい」と要請する一幕があった。
2012年6月に衆参両院で全会一致により可決成立した「東京電力原発事故子ども被災者支援法」の第13条では、原発事故による放射線の健康影響調査について、「必要な措置を講じるものとする」と定められている。特に、子どもである間に一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住したことがある住民の健康診断は、「生涯にわたって実施されることとなるよう必要な措置が講じられるものとする」とされている。
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