殺虫剤メーカーが今年「当たり年」となった理由 気温と巣ごもりで売り上げ急増、一時品薄に

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殺虫剤メーカーの業績が好調なのは、海外売り上げを伸ばしたり、ハエ・蚊以外の商品を拡充したりと、天候に左右されにくい経営構造に改革し続けてきたからでもある。

業績面の下支えとなっているのが、気温が高く、通年で商品が売れる東南アジアなどでの売り上げだ。フマキラーは、1990年に進出したインドネシアを中心に、海外売上高は2010年3月期の48億円から2020年3月期には200億円にまで成長。海外売り上げ構成比も同期間に20%から45%に上昇した。

海外売り上げ構成比は6%と小さいが、アース製薬も海外売り上げを伸ばしている。2019年は113億円で、このうち約7割が殺虫剤だという。

手軽なゴキブリ用殺虫剤が大ヒット

ハエ・蚊用よりも気温に左右されにくい、ゴキブリ用やダニ用の商品比率も上がっている。

インテージ集計のデータでは、ゴキブリ用殺虫剤の市場規模は159億円(2019年)。447億円あるハエ・蚊用の3割超にすぎないが、殺虫剤全体に占める構成比はハエ・蚊用が2015年の51%から47%に下がる中で、ゴキブリ用は14.8%から16.8%と上がっている。

ゴキブリ用殺虫剤の最近の大ヒット商品は、大日本除虫菊が2020年2月に発売した「ゴキブリムエンダー」。ゴキブリがいそうな空間にではなく、部屋の中央で宙に向けてプッシュするだけでいいという、従来の商品にはなかった手軽さが人気だ。

ダニ用商品も、市場規模は2019年で44億円と小さいものの、殺虫剤全体に占める構成比は2015年以降で3.6%から4.7%に上がっている。アース製薬が2018年に発売したワンプッシュ型商品「おすだけダニアーススプレー」の売れ行きは好調で、殺虫成分を使わない天然由来成分を使用した商品も伸びる傾向にある。

ただ、多種多様な製品を次々と市場に投入した結果、「商品が増えすぎて消費者が困ってしまう」(アース製薬の渡辺優一シニアブランドマネージャー)という状況に陥っている。実際、大手ドラッグストアの店頭に行くと、商品棚にはゴキブリ向けの殺虫剤だけで20種類以上の商品が並ぶ。

「商品を増やす段階は終わった。これからは集中と選択のフェーズに入る」と語る渡辺氏。殺虫剤の生存競争も厳しくなりそうだ。

星出 遼平 東洋経済 記者

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ほしで・りょうへい / Ryohei Hoshide

ホテル・航空・旅行代理店など観光業界の記者。日用品・化粧品・ドラッグストア・薬局の取材を経て、現担当に。最近の趣味はマラソンと都内ホテルのレストランを巡ること。

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