大学入試「倫理」は受験生に何を求めているのか 2021年から試される「思考力」の正体

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その分、今まで以上にそれらをテキパキと読み取って答えるスピードが必要になります。これは、資料をじっくり読み込むのではなく、パッと見て「これは、こうすれば答えの出る問題だな」と素早く判断したり、長い文章の「ここだけ見れば答えが出るな」というポイントを見抜く力が問われる。つまり、“判断力”や“情報処理力”を求められるようになっているといえるでしょう。

ポイントは、まずタイトルと設問を見ること。「じっと読み込んだら負け」な資料も多いですので、細かい点を読み込もうとするのではなく、素早く概要を捉えて判断しましょう。この判断力や情報処理力は、いうまでもなく、豊富な知識のうえに培われます。

共通テスト独特の設問は2割程度

また、大学入試センターは、試行調査の「問題作成の方向性」について、次のように発表しています。

“共通テストでは、(中略)……授業において生徒が学習する場面や、社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面、資料やデータ等をもとに考察する場面など、学習の過程を意識した問題の場面設定を重視することとしています。”

この方向性を受けて、「倫理」の試行調査では次のような場面設定が見られました。

・板書や生徒のノート(第1問C)
・課題探究の準備メモやコメント(第4問A・B)

場面設定には新しさがありますが、問われている内容そのものは、科目の知識・技能や、それらをもとにした思考力・判断力でした。実際にも、これまでのセンター試験で定番であった、短文正誤4択問題(1~3行程度の選択肢が4つ並んでいて正誤を判断するタイプの設問)も、試行調査で多く出題されています。

また、これまでのセンター試験でしばしば見られた設問の、いわば「見た目」を変えた程度の設問(例えば選択肢を枠で囲む、資料文読解問題で掲げられた資料文の一部を空欄にした、など)も少なからず出題されていました。

私たち河合塾講師が独自に分析したデータでは、倫理では、「今までと同じ傾向の問題」が14%、「見た目を変えただけの問題」が67%、まったく新しい「共通テスト独特の問題」が19%でした。もちろん、どこで線引きするかが難しいですし客観性のあるデータではありませんが、まったく新しい「共通テスト独特の問題」は2割程度しかないと考えていいと思います。

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