第20回 ワイン造りの時代の転換点に立って

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 利益についてピーター・ドラッカーは次のように語っています

「利益はリスクにそなえるために獲得しなければならない」
「利益とは、企業存続のための条件である。利益とは、未来の費用、事業存続のための費用である」

 ワイン造りは気の長いビジネスです。以前にも記しましたが、ブドウ栽培からワインとして販売して投資を回収するまで3年から5年というサイクルが一般的で、設備投資も多額にかかる装置産業です。これだけでも、かなりのリスクを抱えていることが分かりますが、これに加えて天候リスク、害虫リスクなどが伴います。こうした高リスクに備え、万が一の事態に拠出できる費用を確保するために利益が必要であるというピーター・ドラッカーの主張は、まさにワイン産業が取り入れるべき考え方であると思います。しかし、資本市場が求める短期的成果や過度に流動化された取引は、ワイン産業とは根源的に相性は良くありません。資本市場を使えば設備投資資金を簡単に調達できる点はメリットかもしれませんが、株主の短期的期待に継続的に応えていくことは至難です。

 ワイン造りがもたらしたこれまでの社会貢献は多大です。そこには豊かな営みがあり、多くの人々がワインを通して幸せになっていることは、ワイン造りが何千年と続いたことで十分説明できます。資本主義の歴史はカール・マルクスが『資本論』を1867年に発刊した時点から考えると150年。ワインの歴史の長さと比較して考えると、どちらかというと資本主義の考え方にワイン造りを合わせるのではなくて、ワイン造りにあった資本政策を考えていくことが大切なのではないでしょうか。

■超時代的流れの俯瞰:セパージュ主義は新しくない

 本コラムでは、じっくりとワインの歴史をたどりながら、その時代時代にあったワインビジネスと技術の関係を綴ってきました。ギリシャ、ローマ、フランス、そして、アメリカ。ワインビジネスの中心が時代とともに変遷していくときには、常に技術が存在していたように思います。

 また、不思議とワインの中心国は、その時代の覇権国と緩やかに重なっているようにも見えます。それぞれの国が時代の覇権を握るのは、ちょっとした幸運とともに政治的・軍事的駆け引きが必要ですが、その背景には高い技術力があったからだと思います。高い技術によって覇権国になったのか、覇権国だから高い技術が集まるのか、この鶏と卵の関係はどちらかわかりませんが、技術が時代に影響を与えていたに違いありません。

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