第20回 ワイン造りの時代の転換点に立って
■セパージュ主義とテロワール主義の融合
最近、テロワール思想とセパージュ思想の両方を採り入れたワインが登場し始めました。右の写真は、ブルゴーニュの有名なジョセフ・ドルーアンという造り手のワインです。ラベルの真ん中に「CHARDONNAY」とブドウ品種が記載されています。ブルゴーニュといえば、畑を細かく分類し、テロワール主義の権化ともいえる地域ですが、そのような地域からもセパージュを意識した造り手が現れたのです。
また、同じブルゴーニュの北にシャブリ地方という有名なワイン生産地域がありますが、こちらの有名な造り手である、ミッシェル・ラロッシュ氏は、ラングドック地方にワイナリーを購入し、1985年からシャルドネやメルローといった品種でのワイン造りを行っています。シャブリの造り手ということは、シャルドネのことを知り尽くしている人ですが、その人がラングドック地方でもシャルドネを造ろうと思ったことに、セパージュ主義的な思想が垣間見えます。
このようにセパージュ主義的考え方は、テロワール主義の中心地であるフランスのようなワイン生産者の中にも徐々に広がりつつあることがうかがえます。
逆に、セパージュ主義的ワイン造りの発展の恩恵を受けた新興国では、テロワールを明確にして原産地呼称制度をしっかり構築しようとする動きがでてきています。日本でも、このような動きがあり、長野県では原産地呼称制度が2002年から日本酒とワインを対象に始まりました。同時期に山梨県でも同制度が始まっています。
セパージュ主義とテロワール主義は、現在徐々に融合が進んでいるということです。最終的にどのように融合していくかはまだわかりませんが、ワイン業界は、数百年の時間スケールの新たな時代を迎えているのです。
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