佐川急便、「コロナ危機」を生き抜く物流戦略 消費者向け直販チャネルにどう対応するか

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――そうした顧客にどうアプローチしていくのでしょうか。

われわれは宅配便だけでなく、トータルの物流を提案することで顧客の課題を解決していく。そうした提案を専門で行うチームが「GOAL」で、グループ全体で300人超のメンバーを(今後)10年間で約700人に拡大する。

顧客に合ったソリューションを提案するには、(顧客の)情報をどうつかんでくるかが重要だ。そのためにはセールスドライバーを教育する必要がある。ドライバーが、顧客も気づいていないニーズをいかに探し出すかがカギとなる。

コロナ禍をきっかけに、消費者に直接販売するチャネルが強く望まれている。われわれは物流領域については海外配送など色々なサービスを顧客に提供できるものの、マーケティングなどに関しては安請け合いできない。そうしたニーズにこれからどう応えていくか、という問題意識を今も持っている。

5月から置き配サービスを開始

――ラストワンマイルでも変化が起きているのでしょうか。

もとむら・まさひで/1960年生まれ。1980年に東京佐川急便(現・佐川急便)入社。常務取締役、専務取締役を務めた後、退社。タクシー会社「ANZEN Group」の代表取締役社長などを歴任。2018年3月佐川急便の理事に就任、2019年4月から現職(撮影:今井康一)

例えば置き配は、盗難の被害に遭う心配もあって、なかなか踏み切れなかった。ただ、今回のコロナ禍で顧客からそうした依頼を受けており、5月から「指定場所配送サービス」(という置き配サービス)を始めた。すでに数十件単位の申し込みがあり、少しずつ増えていくかもしれない。

――EC荷物の宅配では、デリバリープロバイダなどの中小事業者が台頭する一方で、アマゾンのように自前物流網を構築する大手EC事業者も登場しています。

「デリバリープロバイダ」という新しい言葉が出ているが、昔から個人事業主などに配送を直接委託するのはどの企業でもやっていたことだ。ただ、運び手となる個人事業主を確保すれば宅配網が完成するわけではない。当然、荷物を仕分けるためのセンターなどが欠かせない。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

われわれも個人事業主などへ委託する一方、日本全国に配達デポと営業所を抱えている。こうしたインフラがあって初めて日本全国に配送できるのであり、これを維持するためには相応のコストがかかる。

加えて配送品質の問題もある。消費者のニーズによっては、ただ荷物を置いてくるだけでよいわけでもない。そうした要望に合わせて、しっかりと品質を維持しながら委託先を確保していく。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、EC事業戦略のほか、日本郵便やヤマトなどライバルへの対抗策を語っている。
佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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