アルファードがヴェルファイアの7倍売れる謎 車種リストラを目論むトヨタのしたたかな策

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全店全車種併売になれば、アルファードとヴェルファイアのように、自動的に販売格差が広がり、好調に売れる車種と不人気車が選別される。メーカーも車種の削減をしやすい。今後はフルモデルチェンジなどで、アルファードが残ってヴェルファイアは削られたり、「ヴォクシー」が継続して姉妹車の「ノア」や「エスクァイア」が廃止されたりするだろう。

ノア/ヴォクシー/エスクァイア3兄弟もモデル統合が行われるかもしれない(写真:トヨタ自動車)

この成り行きは、他メーカーを見れば想像できる。日産やホンダも以前は複数の販売系列と姉妹車を用意していたが、全店が全車を扱う体制に移行すると販売格差が進んだ。

現在の日産では、主力の4車種「デイズ」「ルークス」「ノート」「セレナ」の販売台数を合計すると、それだけで国内販売の70%近くを占める。ホンダも国内販売の50%以上が「N-BOX」を筆頭にした軽自動車で、そこに「フィット」と「フリード」を加えると、ホンダ全体の75%に達する。

両社とも全店が全車を扱うようになって、販売ボリュームが売りやすい低価格の軽自動車やコンパクトカーに偏り、不人気車は廃止されてリストラに至った。

トヨタでもすでに同様の状態が進行しており、「ライズ」「カローラシリーズ」「ヤリス」「シエンタ」「タンク/ルーミー」「プリウス」「アルファード」「アクア」「ヴォクシー」と主力車種の販売台数を合計すると、国内で売られるトヨタ車全体の60%近くを占める。現時点では日産やホンダほどではないが、車種ごとの販売格差が拡大しているのだ。

そうなると姉妹車は削減され、ヴェルファイアやエスクァイアが好きなユーザーにはつらい状態になる。「クラウン」の廃止は考えにくいが、売れ行きは大幅に下がった。

トヨタのリーダーシップが問われるとき

販売会社同士の競争も激化する。以前はアルファードや「ハリアー」を購入するため遠方のトヨペット店まで出かけるユーザーもいたが、今は自宅近くの販売店でどれでも買える。

そうなれば、立地条件を含めた販売力の強い店舗が有利となり、販売店や販売会社同士の淘汰も進む。実際、2013年頃まで国内に展開するトヨタの販売店は約4900店だったが、2019年には約4600店に減っている。

国内市場の縮小を考えるとリストラは避けられないが、ユーザーに不便を感じさせないよう、柔軟に対応してほしい。他のメーカーも、販売面ではトヨタを見習う傾向が強いため、方針を間違えると国内市場全体が誤った方向に進んでしまう。問題が山積みになった今だからこそ、トヨタのリーダーシップが問われていると言えるだろう。

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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