コロナ禍で「都市」が持つ価値が一変した背景 都市社会学の専門家が考える「withコロナ」

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都市で生活する人が増えたことで、どのような変化が生まれたのだろうか。

「都市に異質性の高い人が集まることで技術も一ヶ所に集中し、ITやデザインなど文化産業間での異業種交流が盛んになった。対面のコミュニケーションを中心とした親密な関係をきっかけに、新たなアイデアやビジネスモデルが次々に誕生するようになりました。

都市で暮らすことが結果としてイノベーションを生み、価値にもなっていったんです。これは、日本に限らず世界の大都市も同様です」

しかし長い間忘れられてきた「感染症」という都市の最大のリスクが、今回のコロナによって露呈した。

筑波大学大学院人文社会科学研究科准教授の五十嵐氏(写真:リディラバジャーナル編集部)

「東京でいえば、ほかの府県からの移動を止めなければならなくなり、人の流動をストップさせる必要が出てきた。

また、人がひとつの場所にたくさん集まることも『三密』につながるのでNG。コロナという感染症は、これまでの都市のありかたを否定するものになってしまっています」と、五十嵐さんは話す。

「夜の街」を責めるべきではない

都市部の感染拡大の原因のひとつとして挙げられているのが、ホストクラブやキャバクラ、ショーパブなどの「夜の街」だ。新宿・歌舞伎町のホストクラブでは、複数の店舗からクラスターが発生しているという報道もある。

夜の歌舞伎町(写真:リディラバジャーナル編集部提供)

「ホストクラブのケースでいうと、実は、店舗で感染したケースよりも重要な感染経路があるといわれています。狭い部屋で共同生活をしている売れないホストも多く、そこで感染してしまったケースも少なくないそうです。

感染防止の注意喚起はもちろん大事ですが、夜の街で働く人たちを責めてしまうのは、スティグマ(ある属性を持つ人への偏見や差別)を生むことにもなりかねない。

彼らを責めることでPCR検査に協力してくれなくなるリスクや、自暴自棄になってしまいさらに感染を広めてしまうリスクもあります」と、五十嵐さんは話す。

新宿区では、感染者が出た店名を公表するのではなく、感染したホストにきちんと検査を受けてもらい、再発がないよう店舗で対策してもらうことを優先させている。協力してもらう体制をつくることで、感染拡大防止に務めているのだ。

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