コロナ禍で「都市」が持つ価値が一変した背景 都市社会学の専門家が考える「withコロナ」

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五十嵐さんは、夜の街だけが感染の温床と指弾されることをこう危惧している。

「『夜の街=感染の温床』というイメージがついてしまうと『自分は夜の街で働いているわけではないし、そういった場所で遊んでいないから大丈夫だ』という誤解を生む恐れもあります。夜の街そのものではなく、リスクの高い行為をすることが、感染の可能性を高めてしまうのだということを理解しなければいけません」

互いの選択を尊重することが大切

今回の新型コロナウイルスの特徴は、自分が感染してしまうかもしれないということだけではなく、誰かを感染させてしまうかもしれないという「他害性」があることだ。

感染者が再び増加傾向にあるなか、たとえば「東京都内の居酒屋に友人と飲みに行くかどうか」という行為ひとつとっても、飲食店が営業再開となった現在でも「感染対策をして飲みに行く」という人ばかりではなく「感染リスクを避けるため、しばらくは(居酒屋で飲むのは)控える」という判断をする人もいる。

「誰もがコロナと共存せざるを得ない現在の生活において、すべては『リスクのトレードオフ』なんです。つまり、何かのリスクを避けても、別のリスクを呼び込むということ。

外出をしなければ感染するリスクは避けられるけれど、運動不足による体調不良や、孤独感によるメンタル不調などのリスクが出てくる。また、公共交通機関の利用を避けて自家用車を使う人が多くなれば、感染リスクは減っても、交通事故が起きるリスクは増えます。

たとえば東京での飲み会に誘われたとして、相手の人によって『感染リスクを負ってまで行きたい飲み会ではない』『今後の相手との関係性のためにも今回は参加しておきたい』とか、その飲み会に対する重みは違いますよね。いまの自分の優先度に応じて、それぞれが行動を決めるしかないのが現状です」と、五十嵐さんは話す。

国や自治体が決めるのは、自粛要請などの社会的なリスクトレードオフだ。そのうえで、自粛要請などをどこまで受け入れるのか、どこまで厳密に守るのかということはそれぞれの判断であり、個人のリスクトレードオフになってくる。

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