ブルドックソースの十字架、敵対的買収こそ切り抜けたものの…“公約”も絵に描いた餅
そこでブルドックは、アミノ酸調味料の代わりに野菜からうま味を引き出す、増粘多糖類ではなくコーンスターチで粘りを出す、などの研究を重ね、段階的に添加物の使用を減少させていった。06年11月には、食品添加物不使用のソース発売を実現。大量生産が前提のナショナルブランドにとって、主力製品を食品添加物無添加にするというのは異例の大決断と言っていい。
だが、結果は芳しいものではなかった。肝心の消費者からは「味が変わった」との声が相次ぎ、色素による着色に慣れた目に、「色が薄くなった」との苦情も舞い込んだ。
09年3月期の単体売上高は、健康志向による揚げ物の敬遠やドレッシングなど調味料の多様化など逆風もあり、前期比4%減少している。今のところ、添加物無添加という挑戦はコスト増のみをもたらす結果となっている。大型の設備投資等はなかったが、材料の切り替えや、昨秋の野菜・果実増量による分も含めると、原材料調達価格は逆に3~4%上昇している。
さらに自らのクビを絞める問題も浮上してきた。添加物無添加の方針を明確にしたことで、マヨネーズやドレッシングなど、乳化剤の使用が不可欠な分野進出へのハードルが一段と高くなったのだ。商品開発担当者は「そこを乗り越えなければいけない」(中川氏)と話すが、ソース以外でめぼしい商品はまだない。
そもそもソース市場は、ドレッシングなど他の調味料に押され縮小傾向にある。そんな厳しい環境の下で、“品質の向上”に重点を置いたのは、大手メーカーによる食品偽装の多発が消費者の安心・安全志向を高め、内容物へのチェックを厳しくした、という事情もある。だが、成果に結び付かない最大の背景には、ソース業界の特殊な競争環境もある。
「ブルドックは流通から完全に足元を見られている」と業界関係者は口をそろえる。ブルドックソースの最大のライバルは、オタフクソースとカゴメだ。特に、中濃ソース中心という似た製品構成で、カゴメは最大のライバルである。