ブルドックソースの十字架、敵対的買収こそ切り抜けたものの…“公約”も絵に描いた餅
一つ目は、需要縮小するソース市場への対策として、新たな調味料分野への進出。揚げ物用ソースという用途に限らず事業ドメインを再定義し、液体調味料全体をターゲットに再成長を狙うというものだ。もう一つがコスト削減策だった。まず工場を3カ所から2カ所に再編して生産を効率化する。05年に34億円で買収した関西の老舗ソースメーカー、イカリソースとは、重複部門を統合することで100名程度の人員を削減する、という内容だ。この二つの施策により、中計最終年度の13年3月期には営業利益25億円を達成する、という大目標をブチ上げた。
しかし、現時点ではどれもメドが立っていない。依然として売上高の9割以上をソースに依存し、工場再編は凍結中だ。住宅地に隣接しており稼働時間が限られるため、移転を予定していた鳩ケ谷工場も稼働中で、3工場体制が続いている。
もともとイカリソースの買収は、関西でのシェア上昇とともに、共同調達・共同生産などのシナジー効果を期待してのものだった。が、工場再編計画の凍結により、それも予定どおりに進んでいない。生産現場からは、「イカリソース側もブルドック側も味が変わることを懸念し、共同調達には消極的。社長が期待するほどには至っていない」(中島剛・館林工場長)という声も漏れてくる。
今10年3月期の営業利益は9億5000万円が見込まれ、中計における13億円目標から3億円以上乖離している。「リーマンショックで経済環境が変わったため」(佐藤貢一取締役)と説明するが、もちろんそれだけが理由ではない。
「無添加」シフトだが苦戦 新市場進出の足かせにも
00年に就任した池田社長の下、ブルドックソースも当然、同社なりの成長戦略を実践してきた。その柱が、商品開発の転換だった。「フードエッセンス」という標語の下、食品添加物に依存しないソース作りを宣言。「食品本来の成分を分析せず食品添加物に頼りがちだった」(商品企画部・中川竜一郎氏)開発体制を大きく見直したのだ。
ソースには元来、酢や砂糖が多く含まれており、食品添加物を多用しなくても長期保存は可能だ。だが、日本ではソースに甘みや粘りが求められ、多くのメーカーが増粘多糖類や甘味料を多用することで、消費者の嗜好を取り入れ需要を拡大してきた。