ワクチン情報ハッキングが蔓延する深刻事情

コロナの治療法に関する研究データの窃取も

とくに攻撃者に狙われている情報は、新型コロナウイルス用のワクチンである。アメリカ食品医薬品局のゴットリーブ前長官は、「ワクチン開発で最初に成功した国が、他国に先んじて経済と世界的な影響力を回復するだろう」と4月に予測した。

ワクチン情報は今年最も注目されている知的財産であり、なおかつ莫大な利益をもたらすからこそ、その情報を狙った者たちとの攻防が激化しているのだ。

攻撃者の標的となっているものの中には、イギリスのオックスフォード大学とインペリアル・カレッジ・ロンドンで始まった新型コロナウイルス・ワクチンの臨床試験の結果が含まれるとの報道もある。

7月16日、アメリカ、イギリスとカナダ政府は、3カ国の新型コロナウイルスのワクチン研究開発に関する情報を盗もうとして2020年に入ってからずっとロシアがサイバー攻撃を続けている旨を明らかにした。翌日、オーストラリア政府も声明を発表、アメリカ・イギリス・カナダへの支持を表明している。

3カ国の分析によると、ワクチン情報に関しては、医療機関だけでなく、政府機関、外交関係者、シンクタンク、エネルギー関係機関も攻撃を受けているという。攻撃者は、既知の脆弱性を突いてサイバー攻撃を仕掛け、認証情報を盗み、いつでも標的にアクセスできるようにしていた。

3カ国が団結してサイバー攻撃を分析

今回のサイバー攻撃に関する分析は、アメリカ政府の国土安全保障省傘下のサイバーセキュリティ・インフラ防護庁、国家安全保障局、イギリス政府の国家サイバーセキュリティ・センター、カナダ政府の通信保安局が参加する大がかりなものであった。

イギリス・アメリカ合同または3カ国それぞれの政府がこの数カ月に複数回にわたって、新型コロナウイルス絡みのサイバー攻撃について警告を発してきたが、この3カ国が一緒にコロナ禍のサイバースパイ活動を非難したのは今回が初めてである。

3カ国は、国と組織の垣根を超えて知見を結集させ、サイバー攻撃の被害を防ぐとともに、新型コロナウイルスの治療のための知的財産を守ろうとする強い意思を世界に示した。その一方で、ロシアのペスコフ大統領報道官は、ロシアの関与を直ちに否定している。

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