ホテル供給過剰へ、単価引き上げ課題
新型コロナウィルス感染拡大の「第2波」の到来において、政府の「Go Toトラベル」をめぐる迷走は、コロナ禍で痛んだ沖縄観光にも、追い打ちをかけるような混乱を巻き起こした。ホテルやレンタカー事業者は旅行時期の変更や中止を決めた客からのキャンセル対応に追われ、期待していた観光の回復の遅れが決定的となった。県内でも本島中南部を中心に感染拡大が続いており、再び来県自粛を求めるべきか、沖縄県は経済への打撃を最小限に抑えるための難しい判断に迫られている。
観光客数の増加などを背景に、沖縄では過去15年ほどの間に国内外の資本によるホテル開発が続いてきた。沖縄県の統計によると、リゾートや宿泊特化型などを含む「ホテル・旅館」軒数は2018年度、561軒(3万9414室)で前年度に比べて20.4%増。過去10年で比べると、ホテルは222軒増え、客室数は1万室以上増加している。
新規開業だけではなく、既存施設では多いところで2〜3年おきの転売で所有者となるファンドが入れ変わり、投資家にとって沖縄が収益性の高い観光地であることを裏付けてきた。だが、近年は客数より収容人数の伸び率が上回り、「供給過剰」に転じる懸念が指摘されていた。
新型コロナの長期化で、その懸念は一気に現実のものとなる。観光産業を支える沖縄のホテル業界には、従業員の雇用や所得の分配を守り、次の成長ステージに進むためにも、単価の引き上げをかなえる「質の追求」が改めて突きつけられている。
沖縄に昨年新たに開業した世界有数のホテルの実践と、沖縄の老舗ホテルグループの長期的な挑戦に、人と地域性を生かすホテル事業発展のヒントがある。
沖縄本島北部・恩納村の西海岸沿いに昨年7月開業した高級リゾートホテル「ハレクラニ沖縄」。「Go To」が始まる直前の7月20日、ホテルを訪れた。暑さが幾分和らいだ午後4時ごろ、ホテル中央の屋外プールには多くの家族連れやカップルの姿。水平線の向こうに沈む夕陽を眺めるフレンチレストランでは、コースディナーを楽しむ予約客でほぼ満席状態だった。
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