だが当然、期待されるホテルサービスがすぐに実現できたわけではない。ゲストサービスを担当するスタッフの8割を新卒者など未経験者が占めた。
トレーニングは開業の2カ月前から。全員が最高潮のモチベーションでオープンの日を迎えたものの、「試合と練習とでは大違い」と吉江氏。「最初の1カ月、8月末までの評価はボッコボコ。お客様から苦情、苦言を直接言われ、(ネットに)書かれ、本当に現場は毎日辛かった。あまりの厳しさに正直、『理想にすぎなかったのか』とよぎったほど」と苦笑いする。
だが、ここから反転劇がある。現場から上がる改善点を全員で共有し、対応方法を学び、話し合う。絶え間ない接客の改善に試行錯誤を重ねるうち、12月には顧客からの「評価」は9割がポジティブな内容へと逆転した。「内容を見ると人についての評価が多い。やっていることは正しかった、そう確信できた」と吉江氏はいう。過去6つのホテル開業に携わった経験のある自身にとっても、半年という短期間で顧客満足度の結果を引き上げられたのは初めての経験だった。
未経験者が多いスタートラインは、多くのホテルでも共通するだろう。だが、落ち込む現実から逆転に導けるかどうかは、働く人の生かし方、関わり方にリーダーの信念が反映される。
同ホテル宿泊部の勝木晶子部長は「ここでは、『世界を代表するラグジュアリーホテルを創造する』というミッションを、全員が毎日本気で意識している。ホテル業界をリードしていくのにふさわしい人間になること。人としていちばん大事なことを大切にすることが、ホテリエの力を上げることになる」と強調する。
「地域の方々から誇りに思ってもらえるような」
ホテルスタッフが指針にする「ハレクラニ沖縄ビジョン」にはこんな文言がある。
「地域の方々から誇りに思ってもらえるようなホテルになる」「沖縄の魅力を発見し、表現する」──。
ホテルで提供するペットボトルの水や料理、アメニティー、土産品にも沖縄の素材や地元製造にこだわった独自企画の品が目を引いた。沖縄の地域性を引き出す工夫そのものが、最高のホテルサービスを創造する不可欠な要素となっている。
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