中国の「揺さぶり」に、屈しない法(上)

商船三井の「次」は避けられるのか

商船三井は、鉄鉱石の運搬契約で、中国の大手鉄鋼メーカーであるパオスティールとの間で20年契約を交わしている。2011年から始まった契約は、まだかなり残っているために、商船三井としては「二次災害」を回避するために、40億円を支払ったのである。

これを受けて、当然ながら中国の裁判所は差し押さえを解除した。完全な中国側の「勝利」であろう。一般のビジネスに照らし合わせれば、示談に入ってすでに3年を経過している場合、大昔の1936年の問題でもあり、事情を勘案して賠償金を減額して解決するのが一般的措置ではないか。だが、事実上、政治的思惑に翻弄された商船三井としては、かなり厳しい結果となった。

中国に限ったことではないが、やはり中国の手強いところは、「相手が弱いと見ると、徹底的にそこを突いてくる」ところだ。中国の故事に曰く、「打落水狗(=溺れる犬は、石もて打て)」とあるように、今回と同じようなかたちで今後提起されるような訴訟には、十分気をつけるに越したことはない。

すでに、天津市でも同じように、やはり戦時中に日本に徴用された船舶を所有していた海運会社「北方航業」の親族が、対日訴訟を準備していることが報道されている。複数の関係者が明らかにしたところによると、損害賠償要求額は400億円を上回るともみられ、事実上、日中戦争賠償をめぐる一連の訴訟で、最高水準となりそうだという。

中国は1972年の日中共同声明で「戦争賠償の請求放棄」に合意している。両国関係への配慮などから、いままでは国内で民間の訴えを受理してこなかったが、歴史問題を巡る対立などを背景に、方針を転換したと見るべきだ。中国国内のチャットなどには「戦争責任を追及して、進出している日本企業の資産財産をすべて接収するべき」といった意見まである。これらは極端としても、今後の中国側の出方が注目される。

では、こうした中国の事実上の方針転換に対して、少なくともビジネスの面からどう対処すればいいのだろうか。何か、やれることはないのか。次回は、日本側の未熟さが問題を複雑にしていることにも触れながら、考えていきたいと思う。

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