享年17歳の闘病ブログが10年後の今も残る意味 七回忌で更新を止めたネット墓に見えること

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今もネットに残っている享年17歳の闘病ブログ「ワイルズの闘病記」
ウィズコロナの時代になり、オンライン葬儀とともにオンライン墓参りを真剣に検討する人が増えてきた。しかし、オンライン墓参りに近いことは以前から普通に行われている。CGの墓石に手を合わせるヴァーチャル霊園サービスもあるが、ここで言いたいのは故人が残したブログやSNSページのことだ。生前に残された最後の投稿に遺族や知人、ファンが“墓参り”して何年も追悼する。なかには数万件のコメントが書き込まれている例もある。
ただ、残された側からすると、故人のサイトは戸惑いの対象にもなる。生前最後の投稿にどんなコメントやリアクションをすればいいのか悩んだり、SNSで故人の誕生日がピックアップされて複雑な心境になったりした人は少なくないだろう。さらに遺族の立場だと、故人のサイトを引き継ぐか抹消するかといった対応にも頭を悩ませることもある。
故人のサイトとどう向き合うのが正解なのか? 簡単には答えが出せない問題だが、先人の事例から何かをつかむことはできるだろう。具体的な事例を紹介しながら連載で追っていきたい。

10年も墓として機能している「ワイルズの闘病記」

「ワイルズの闘病記」というブログがある。T細胞型急性リンパ性白血病を患う埼玉県在住の男性「ワイルズ」さんのブログで、高校1年時の2009年2月にスタートした。2010年8月にワイルズさんが亡くなった後は両親が引き継ぎ、更新ペースを落としながらも七回忌(6年目の命日)まで記事を継続。以降は静止したままだが、彼の母(母ワイルズさん)は没後10年経った現在も毎日アクセスしている。

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つまり10年も墓として機能していることになる。これはかなり稀有なことだ。

闘病ブログは書き手の生死が不明なまま更新が止まることがよくあるし、訃報を家族や友人が残した場合もしばらくして放置状態になったり、スパム書き込みの餌食になったりすることも多い。ブログブームが落ち着いた現在はサービスの終了に伴ってひっそりと消滅するパターンも増えている。ここ最近でもYahoo!ブログが2019年12月に、ヤプログ! byGMOが2020年1月に終了した。

「ワイルズの闘病記」が利用しているFC2ブログが現在もサービスを継続しているのは、単に運がよかっただけなのかもしれない。ただ、墓として機能するためのもっと重要な要素はブログの本文から読み取れる。

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