享年17歳の闘病ブログが10年後の今も残る意味

七回忌で更新を止めたネット墓に見えること

ワイルズさんがブログを始めた経緯は、最初の記事「はじめに」などで簡潔に語られている。直接のきっかけとなったのは白血病の再々発だ。

小学3年生で白血病を初発。2年間の化学療法で治まったものの、中学1年生の頃に再発して骨髄移植を受けた。中学時代はあまり体調が戻らず、欠席や早退を繰り返す暗い生活を送っていたが、高校に進学してからは体調が回復し、無遅刻無欠席で明るく積極的な日常が送れるようになったという。

暗転は年が明けた1月の終わりに訪れる。スキー教室から戻った後に発熱し、2週間の欠席を余儀なくされた。地元の病院と小児医療センターで血液検査を受けたところ、再々発が確定。そのまま入院となり、抗がん剤治療を受ける日々を余儀なくされる。再々発の治療は難しく、医師からも身体の反応を見て手探りで方針を立てると説明を受けた。そのとき、ブログを立ち上げようと思った。

勝算は「低い闘い」、でも「可能性」はある

最大のショックは、ここまで軌道に乗っていた生活が崩れてしまったこと。全く同じ生活を取り戻すには、途方もない時間と労力がかかります。
(中略)
勝算は低い闘いです。
本を読むと、5年生存率は20%だとか10%だとか、確率的にはひどい数字が載っています。
しかし「可能性」はあるわけで、つまり結局のところ確率なんてものはただの数字に過ぎないわけで、実際の闘いには関係がないと思っています。「お前がこの闘いに勝つ確率は100分の1だ」と言われたら、「私は白血病になりましたが、その確率は100000分の1で、今回の再々発はそのさらに100分の1です」と返せばいいのです。
(2000年1月1日「はじめに」)

原動力は日常を奪った白血病への怒りと、「死んでたまるか」という生存欲求だ。

2009年5月1日「今後の予定について」

彼はそれまでもネットで活動しており、愛猫とファーストネームをかけた「PON4416(ポンよしひろ)」というハンドルネームを使っていた。しかし、このブログではあえて「ワイルズ」と名乗っている。

数学が好きだった彼は、約350年間誰も解けなかった数学の超難問「フェルマーの最終定理」を1995年に証明したアンドリュー・ワイルズにあやかってつけたのではないか。後にブログ上で父(父ワイルズさん)はそう推測している。奇跡のような偉業を成し遂げた人物に、奇跡を起こそうとしている自分を重ね合わせるために。

その一方で、「勝算は低い闘い」と分析し、自らが命を落とす可能性をつねに念頭に置いているのが印象深い。ブログ開始から1週間近く経った頃、次のような決意表明を記している。

次ページ死から目を逸らさずに骨髄移植
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