宿敵たちを一人ひとり、表舞台から追い落とす
フランクのやり口は、実にしたたかで狡猾だ。まずは、自分の意のままに動いてくれる人物として、酒・ドラッグ・売春など問題の多い下院議員ピーター・ルッソ(コリー・ストール)の窮地を救い、いいように利用する。狙われたルッソは気の毒としか言いようがないが、弱い者の匂いを敏感にかぎ取るフランクは、まるで狩りをする優秀なハンターのように残忍かつ生き生きとして見える。
もうひとりの協力者は、ワシントン・ヘラルド紙の若く野心的な政治記者ゾーイ・バーンズ(ケイト・マーラ)。色仕掛けとも思える手段でフランクに近づくゾーイに興味を持ったフランクは、彼女にひそかに“特ダネ”をリークし、政治を世論に訴えてワシントンの中枢に揺さぶりをかける。彼女は一躍注目のスター記者となる。
何より、夫を甘やかさない妻クレアの存在は、フランクにとって大きい。「裏切られてかわいそうに……」ではなく、「目の前にぶら下げられたニンジンに浮かれて足元をすくわれたのよね? あなたが抜かったのよ」と、言葉はなくとも態度で示すクレアのリアクションは、誰よりも男前!
さらに「だいたい、そのなまった体は何なのよ? 鍛えて気合いを入れ直しなさい」と言わんばかりに、フランクのために地下室にボートこぎのマシンを勝手に設置するあたりは、ニヤリとさせられる。
かくして、秘密の共犯関係が出来上がる。おのおのが好むと好まざるとにかかわらず、フランクは宿敵たちを熾烈なパワーゲームの表舞台から、またひとり、またひとりと追い落としていく。相手の心を読み、それぞれの性格やこれまでの行動パターン、政治的理念などから自らに都合のよい“正解”を引き出すべく、フランクは先手を打って言葉巧みに誘導する。ある時は同情的な態度を装い、またある時は誠実さをアピールするために、わざと本音を散りばめながら。
視聴者に目配せ、共犯関係が生まれる
議員歴22年、百戦錬磨の政治家であるフランクの読みの鋭さは、思わずうーんとうなってしまうほどの鮮やかさ。相手が予想どおりのリアクションを取ったとき、フランクは「ほらね、言ったとおりになっただろう?」とばかりに、画面の向こうから視聴者に目配せする。
主人公が見る者に向かって語りかける手法は映画でもたまに見かけるが、この演出は小さな画面で見る場合、より親密さを感じさせる(これは後述する本作のオリジナル版英国ドラマにならっている)。言ってみれば、フランクと視聴者の間にも、またある種の共犯関係が生まれるような感覚を演出しているのだ。
なんて悪いヤツなんだと思いながらも、「この屈辱を忘れるな」をただひとつのルールとして、ホワイトハウスへと一歩一歩近づいていくフランクの野望に、筆者はゾクゾクするほどのカタルシスを感じてしまう。まさに、復讐は蜜の味!
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