オバマ大統領も夢中になった!
本作には原作がある。イギリスの保守党でマーガレット・サッチャー首相のアドバイザーを務めたマイケル・ドブズの小説『ハウス・オブ・カード』を、イギリスBBCが1990年、1993年、1995年に各4話の3部作としてドラマ化した『野望の階段Ⅰ~Ⅲ [HD完全版]』(こちらも秀作! イマジカBSにて2014年7月21日から3夜連続放送)をベースに、ワシントンを舞台に現代に置き換えたハリウッド版リメイクだ。
脚本と製作総指揮を手掛けるボー・ウィリモンは、実際にヒラリー・クリントンら大物政治家たちと働いた人物で、ジョージ・クルーニーが監督(兼共同・出演)の映画『スーパー・チューズデー~正義を売った日~』(2011年)で、自身の戯曲を脚色してアカデミー賞にもノミネートされた脚本家。大まかなプロットはオリジナル版を踏襲しつつ、時事ネタやアメリカの政治を巧みに取り入れたリアリズムは、娯楽でありながら臨場感があるのも、経験者ならではとうなずける。
実際に、オバマ大統領(けっこうなドラマ好きのよう)は、本作のシーズン2が一挙配信となる前日(今年2月13日)に、「ネタバレをしないでほしい」とツイートしたことが話題となった。ホンモノの大統領が夢中になる政治サスペンスなのだから、やはりリアリティがあるのだろう。
もっとも、「笑顔で握手しながら机の下で足を蹴り合う」的なビジネスシーンは、何も政治の世界に限ったことではないかもしれないが。
平気で裏切る人間は、忠誠心を重んじる
ところで、『ハウス・オブ・カード』にはフランク語録とも呼ばれる名言や独特の言い回しが多々登場する。中でも印象に残るのは、“忠誠心”についてのくだりだ。
フランクのように人を平気で裏切る人間は、猜疑心にとらわれ、つねに自分が裏切られる可能性を警戒する、またはおびえることになる。敵は外にばかりいるわけではない。心弱いが良心もある政治家ルッソ、本来は正義感の強いジャーナリストのゾーイ、ひたすら影の存在として汚れ仕事をするタグ、そして自らも強い野心を持つ妻クレア。はたして、彼らはどこまでフランクの野望を共有できるのだろうか……。
フランクのような人物にとって、“忠誠心”こそが何にも代えがたい貴重なものとなるのは時間の問題なのだ。これはシェイクスピアの悲劇から映画『ゴッドファーザー』シリーズなどに至るまで、権力に取りつかれた人間を描いた傑作とされている古今東西の作品に共通しているテーマだろう(ちなみに、主演のスペイシーは、インタビューで本作を『リチャード三世』になぞらえて語っている)。
先に述べたウィリモンは、大統領予備選挙の舞台裏を描いた『スーパー・チューズデー~正義を売った日~』の中でも、こんなセリフを登場人物に言わせている。
「政治という魑魅魍魎の世界では、信頼だけが通用する通貨。(中略)この世で唯一重んじるのは、忠誠心だ」
これは、長年政治の中枢で政治家たちを見てきたウィリモンの本音なのかもしれない。信頼関係を築くためには時間がかかるが、壊れるのは一瞬だとはよく言われることだ。ビジネスパーソンにとっても、仕事をするうえであらためて考えさせられるものがあるのではないだろうか。
※後編を6月13日(金)に公開します。
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