「世界の山ちゃん」社長急死で妻が見せた"手腕" 経営素人から、全国68店舗を率いるトップに

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「私の仕事はみんながバラバラにならないようにまとめ、やる気にさせることだと思うんです」

『世界の山ちゃん』葵店の中にある、『世界の山ちゃん博物館』。昔の店舗の再現コーナーには、前会長・重雄さんのパネルも(撮影:渡邉智裕)

そんな経営スタイルの現れの1つが社員のスペシャリスト化。兼任が多かった職務を、営業なら営業、企画なら企画と、それぞれの役割に専念させる体制に改革したのだ。

「会長のときは思いつきでドンドンやっていたと思いますけれど、これからは社員がそれをやらなくちゃ。それぞれが考えて行動して、責任をとる行動をしなさいと、常々言っています」

前出・横井さんも、

「以前はよくも悪くもトップダウン。会長に喜んでもらうことをするのが目的でした。今は“会社のためになることをする”が目的です」

従業員全員をまとめるパイプ役として、東京への出張も意識して増やしている。

「私が継いだとき、東京に不採算店がいくつもあって。東京には“名古屋とは別”という意識があったようです。それで行き来を多くして、私も毎月、東京に行ってみんなの顔を見て。そのうち業績はよくなりました。みんなの意識が“名古屋と関東”でなくて、“エスワイフード全体”に変わった。ただ、それだけなんですけどね」

人と人とを結びつけ、“自分も組織の一員である”という自覚を持つ。すると組織はそこまで変われるものなのだ。

監督も社長もやっていることは同じ

さて、ご多分に漏れず『世界の山ちゃん』も新型コロナウイルスに翻弄された。

自粛勧告を受けての休業で、売り上げは前年比で9割減。だが、休業中も給与は全額を補償、社員の生活を守った。レギュラー以外を切ることができなかった監督に、現場を犠牲にすることなど、できるはずもなかった。

「お店がいいときは、社員さんアルバイトさんにやってもらっているばかり。苦しいときこそ、先代が残してくれたお金を使って生活を守っていってあげないと」

休業中は社員有志とマスク作りに励み、2200枚の手作りマスクをNPOに寄贈したという。

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