「世界の山ちゃん」社長急死で妻が見せた"手腕" 経営素人から、全国68店舗を率いるトップに
山ちゃんの急死
4年前の、2016年8月21日の朝6時――。
気象庁の記録によれば、この日、名古屋の気温はすでに25.2度。昨日までの雨も上がり、蒸し暑い1日となることは確実だった。
自宅2階の寝室で、山本久美さん(当時49歳)が目を覚ました。
夫の山本重雄さんは、スパイシーな手羽のから揚げを看板に、一代で『世界の山ちゃん』全国61店舗網(当時)を築き上げた飲食業界のカリスマ。やり手経営者の常として、4時か5時には起床。誰よりも早く仕事を始めるのが日課だったから、この時間なら、もう出社しているはずだ。前日は、知人が開いた『ゆかたの会』に参加。大勢のゆかた美人に囲まれて、ごきげんなひとときを過ごしたばかりであったという。
久美さんが寝室から1階のリビングへ向かう。目に入ってきたのは、床に横たわる重雄さんの姿だった。
久美さんが言う。
「ふざけて寝たふりをしているんだと思いました。うちの子どもは、起こしたあとによく2度寝しちゃうんです、リビングで。
主人はそれがすごく嫌いで、“1度起きたら寝るな”と言っていたのに主人が寝ている。だから冗談でやっているんだと。それで、“お父さん、いつも2度寝はダメだって言っているじゃない”そう言いながら起こしにいって……」
冗談どころか、大ごとだと気づいた久美さんがあわてて救急車を呼ぶ。
病院に運ばれたが、重雄さんが目を覚ますことは2度となかった。享年59。死因は大動脈解離だった。
「決して悪いようにはせんから――」
久美さんにも従業員にも、そう語りかけるのが常だったというカリスマ経営者の突然の死去。
「“決して悪いようにせんから”が、いちばん悪いことになっちゃったな、って……」