「i-MiEV」月販10台でも生産が続けられる理由 小型EVのメリットを浮き彫りにした立役者

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現在、販売されている「i-MiEV」。総電力量16.0kWhの「X」グレードのみラインナップ(写真:三菱自動車)

三菱自動車(以下:三菱)の電気自動車(EV)である「i‐MiEV(アイ‐ミーブ)」の販売台数は、昨2019年の1年間で、わずか105台(海外を含めても219台)という寂しい数値だ。

日産のEVであるリーフが、昨年度(2019年4月~2020年3月)に1万7772台を販売し、日本自動車販売協会連合会(自販連)の「乗用車通称名別ブランド順位」で40位に入っているのと比べ、隔たりは大きい。

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また、リーフがモデルチェンジを行い2代目へと進化しているのに対し、i‐MiEVは初代のまま発売から11年を経過していることも、商品力を低下させている要因と考えられる。それでもなお、三菱がi-MiEVの販売を続ける理由はどこにあるのだろうか。

発売当初の価格は438万円

三菱が、軽自動車のEVとしてi-MiEVを発売したのは、2009年のことである。まず法人向けとしてリースで販売を開始し、翌2010年に一般消費者へ拡大して売り始めた。同年には日産からリーフも発売されたが、法人向けに限ってとはいえ、i‐MiEVは「世界で最初にEVを量産市販した」ということができる。

市販EVを最初にという気概を基に、三菱は2009年の前から慎重に導入の道を探って来た経緯がある。i-MiEVの正式な発売は2009年だが、2006年にそのベース車両となるガソリンエンジンの「i(アイ)」が誕生した同年に、早くも製造は始まっていた。

発売当初の「i-MiEV」(写真:三菱自動車)

そして、翌2007年から電力会社などへ提供されて、実証実験を開始。走行性能や1回の充電での走行可能距離、また充電などに関する知見を積み重ね、狙いとしたEVの市販への準備を始めたのである。そして顧客の利用状況を見極めやすい法人から市販を開始し、どのように使われるか実態の見えにくい一般消費者への販売にこぎつけたことになる。

一般消費者への販売は、運転操作や充電の仕方、また走行距離の長短など含め千差万別であるため、どのような反響があるか大きな不安があっただろう。そのうえで1番の課題は、走行距離より販売価格であったに違いない。

メーカー希望小売価格は438万円(税抜き)もしたのである。軽自動車の価格帯は150万~200万円だから、とても気安く買えるクルマではない。現在では税抜きで300万円を切るが、やはりガソリンエンジンの軽自動車の1.5倍ほどになる。したがって、一般消費者へ販売をはじめた2010年の年間販売台数目標は、5000台であった(前年の法人向けでは約1400台)。

次ページリーフは累計45万台、i-MiEVは1.6万台だけど…
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