「この期におよんでも」と言えばいいのか。いくつもの自動車メーカーがバッテリー駆動に移行していくのを前に、いまだエンジンにこだわるメーカーもある。
たとえば、ここで紹介するイタリアのマセラティだ。なんでわざわざ、凝りに凝った6気筒エンジンを2020年に開発したのだろう。
詳しくいうと、ネットゥーノ(イタリア語でネプチューンの意=マセラティのシンボル的存在)と名付けられた3.0リッターV型6気筒エンジンで、2020年6月に発表された。
F1などで使われるツインプラグ方式を採用。エンジン負荷に応じて燃焼を使い分ける、高効率性が特徴となっている。
「自動車とはエンジンである」とは、以前からよく言われたこと。自動車メーカーは、新しいエンジン開発に成功した場合、単体で発表することがある。
日産自動車も、凝ったリンクをピストンに組み込んで負荷(加速など)に応じて圧縮比を切り替える「VCターボ」を、現行「エクストレイル」搭載前に単体で発表したことがある。
マセラティのネットゥーノも同様に単体で発表され、3カ月後に「MC20」というスーパースポーツに搭載した。
私は、イタリア・モデナ郊外にある「マセラティ・イノベーション・ラボ」を訪れたことがある。そのとき、開発風景を見学。性能とともに音色(おんしょく)といった「感覚的な要素も大事だ」と説明された。それにしても、なぜ2020年に?
BEVは「未来の一部」ではあるけれど
2030年にはどのメーカーもバッテリー駆動へと移行しようという今、マセラティも例外でない。実際、2024年3月に東京で開催された「フォーミュラE」レースにおいても、マセラティコルセ(同社のレース部門)のジョバンニ・スグロ代表は、このBEVレースを「自分たちが向かう未来の一部」としていた。
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