足まわりの設定は、MC20ほど締め上げられておらず、しなやかに感じられるが、サーキットのカーブではしっかりと車体を支え、ステアリングも反応がよく、ネットゥーノのパワーを、スポーツクーペというコンセプトに基づいてしっかり生かしてくれている。
車内の出来もとてもよく、ドイツ車とは違う質感も特徴的。後席は、乗り込むときだけちょっと苦労するけれど、ひとたび収まってしまえば、身長175cmの私でも落ち着いていられる。
ホイールベースが3m近いだけあって、GT(グラントゥーリズモ)としてパッケージングも高得点。長距離を走るのにもよさそうだ(この加速感には興奮しっぱなしかもしれないけれど)。
予想を裏切る楽しいSUV
もう1台、ネットゥーノ搭載の「トロフェオ」グレードが設定されているのは、2022年春に日本で発売されたSUVの「グレカーレ」だ。
マセラティは「レヴァンテ」というSUVを2016年から販売しているが、グレカーレはそれよりホイールベースで104mm、全長で141mmともに短い(グレードで若干の差はあり)。
一説によると、当初マセラティは、ネットゥーノをグレカーレに搭載する計画がなかったとか。しかし、開発途中に計画が浮上。幸い、このV6は前後長がコンパクトなので、搭載位置を工夫することで、グレカーレのエンジンルームに収まったのだという。
最高出力は390kW(530馬力)と、MC20とグラントゥーリズモよりやや控えめで、最大トルクは620Nm。なによりの特徴は、SUVのため、全高が1660mmもあること。なので、サーキットでは不利だろうと思ったが、予想を裏切る楽しさを提供してくれた。
カーブを曲がっていくときの身のこなしも、スポーティ。車体のロールは抑えられているし、ハンドルを切ったときの車体の反応もよい。
個人的には、マセラティのSUVなら、車体のロールもそれなりにあり、アクセルオン/オフに対する動きもあるレヴァンテが、運転する楽しさを味わわせてくれて気に入っている。でも、ネットゥーノのスポーティな味を堪能しようというなら、グレカーレだろう。
いつまでエンジンを楽しんでいられるか。メーカー自身も、いつまでエンジン車を作り続けるのか、迷っているフシもある。しかし、マセラティのような楽しく官能的なエンジンを体験すると、「できるなら続いてほしい」と思うものである。
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