「i-MiEV」月販10台でも生産が続けられる理由 小型EVのメリットを浮き彫りにした立役者
将来的にリチウムイオンバッテリーの原価が下がっていけば、もはや大きくて高価なクルマを手に入れることが、社会での成功を示すものではなくなっていくだろう。また、高価なクルマを手に入れられない人でも、EVなら安価に快適な移動手段を手にすることができるようになる。こんな未来のクルマ像が、i‐MiEVに乗ると鮮明になるのだ。
i-MiEVが果たした役割を、単に販売台数の多少だけで評価するのは間違いだろう。1886年にドイツのカール・ベンツによって生み出された、ガソリンエンジン自動車というクルマの基本概念を一変する、革命的な体験をもたらしたのだ。
ミニキャブMiEVで見えた商用EVの可能性
さらに、i‐MiEVで築き上げられた軽EVの技術は軽商用車へも応用され、2011年には商用バンの「ミニキャブ」をEVとした、「ミニキャブMiEV」が発売された。メーカー希望小売価格は、240万円~297.1万円で、バッテリー容量の大小や標準ルーフ/ハイルーフが選べた。
i‐MiEVよりは安いが、生産財としてみる商用車としては、ガソリンエンジン車の価格帯の2倍以上となり、気軽に買える軽商用EVとはならなかった。その後、「ミニキャブMiEVトラック」という軽トラックも加えられたが、状況は変わらない。しかし、ここでも商用車の在り方を考えさせる体験があった。
生産財として仕事で使われる商用車は、一般的に乗用車と比べて日々走行する時間帯が長い。近距離での配達や営業などが多いため、走行距離は伸びないかもしれないが、クルマに乗っているは時間が長いのだ。しかも、ガソリンエンジン車の商用車は、騒音も大きく乗り心地がよくない。ところがEVになると、静粛性が格段に高まり、乗り心地も落ち着き、快適な商用車になる。
経営的には、高価な買い物かもしれないが、働く人にとっては運転中の労働環境が圧倒的に改善されるのだ。これにより、仕事中のストレスや疲労は、大きく軽減されるだろう。
EVならではのデメリットである航続距離の短さは、行く先が概ね決まっている配達や営業活動が多い業種なら大きな問題にはならない。近距離のルート営業のような使い方なら、航続距離の長さは求められないから、大容量バッテリーも不要で価格も下がる。
現状では、ガソリン代よりも電気代の方が断然安いので、ランニングコストを抑えられるメリットもある。加えて、ガソリンスタンドの数が減少していることも考えると、ガソリン補給のために離れたガソリンスタンドへ行く手間がなく、仕事を終え帰宅したり帰社したりしたら200Vの普通充電をすれば済む。
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