「i-MiEV」月販10台でも生産が続けられる理由 小型EVのメリットを浮き彫りにした立役者
そこで販売価格を下げる目的で、リチウムイオンバッテリー搭載量を減らし、その航続距離も短くはなるが、メーカー小売価格を消費税込みで260万円(消費税5%)とした「Mグレード」を2011年に追加している。また、当初から販売している仕様も、380万円(消費税5%含)へと、80万円ほど値下げした。
そうして始まったi‐MiEVの販売は、2020年3月末時点で累計1万1666台である。海外を含めると2万3650台だ。他に、PSA(プジョーシトロエン)へOEM供給され、プジョー「ion」、シトロエン「C‐Zero」)として販売されたものもあるが、その数を三菱は公表していない。どちらにせよ、累計販売台数で45万台に達するリーフと比べると、その数はやはり限定的だ。
それでも、i‐MiEVが残したものは大きい。
ガソリン車との比較で光るEVの良さ
まず、ガソリンエンジンのiは、外観の独創性に魅力はあるが、乗り心地は一般的な軽自動車並みで、また車体後ろに搭載されるエンジンの音がそれなりに室内に届き、急加速時などはうるさいクルマだった。ところが、EVになると当然ながら静粛性は格段に向上する。
また、リチウムイオンバッテリーを床下に搭載することにより、その重さで小刻みな振動が少なくなり、ゆったりとした優雅な乗り心地になった。床下へのバッテリー搭載は、重心の低下にも寄与しており、走行安定性も高まっていた。
そのうえで、ガソリンエンジンと比べてアクセル操作に対する応答が約1/100も速くなるモーター駆動によって、加減速に人間の感覚との差がなくなり、運転の醍醐味をより味わえるクルマになったのである。ガソリンエンジンのiとベースが同じクルマであるとは思えない仕上がりを感じさせてくれた。
2000年からは、軽自動車も高速道路を時速100kmで走行できるようになったが、エンジン騒音や振動などによって、長距離移動は疲れやすい。一方、リチウムイオンバッテリー搭載による重量増や、モーター走行などによって走行安定性などが改善されたi‐MiEVで高速道路を長距離移動してみると、あたかも上級車種に乗っているかのように疲れにくいのである。静粛性も高いため、前席と後席の乗員が大きな声を出すことなく、普通の声で会話を楽しむこともできた。
軽自動車は税金や保険、あるいは高速道路や一部の有料道路などの料金が登録車に比べて安く、それでいながらEVになると登録車のコンパクトカー以上に快適なクルマになるのである。この体験は、リーフなどの登録車以上にEVの利点を生々しく実感させるものであった。
エンジン車で130年以上にわたって培われてきたクルマの概念、すなわち車体が大きく高性能なエンジンを載せたクルマほど優れているとする考えを、根底から覆すものだとも言える。本当の意味で「小さな高級車」「小さな高性能スポーティー車」といったクルマが、EVなら実現できた。
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