中国が「電気自動車」をめぐる政策を見直す事情 低燃費車とされるHVやMHEVなどの車種を優遇
6月10日、ホンダは中国で中型セダン「クライダー(Crider)」のハイブリッド車(HV)を発売し、GMは48ボルト(48V)の主電源システムを持つマイルドハイブリッド車(MHEV)のシボレー「Orland」を投入した。さらに、翌11日、中国大手国有自動車メーカーの第一汽車は48VのMHEV「紅旗H5」の量産開始を発表。低燃費車といわれるHVやMHEV車種の増加は、電気自動車(EV)シフト一色だった中国自動車市場の変化を物語っている。
政策の恩恵に浴してきた中国の新エネルギー車(NEV)市場は、補助金支給額の削減により、2020年6月まで12カ月連続でマイナス成長を記録。環境対策を推進する中国政府は電動化の「一本足打法」を軌道修正し、低燃費車など多様な技術路線も重視する方針を示した。
省エネ技術の空洞化の懸念
中国では、現在CAFC(平均燃費消費)規制とNEV規制の「ダブルクレジット政策」が実施されており、罰則付きのルールによりメーカーのNEVシフトが促されている。乗用車メーカーにとっては、燃費規制への対応が遅れると、NEVの生産負担やNEVクレジット購入コストが増大する仕組みになっている。
ところが現実には、多くの地場メーカーがNEV生産に参入したことで、大量の余剰NEVクレジットが発生。2019年のNEVクレジット供給量は383万ポイントであったのに対し、需要量は80万ポイントにすぎない。その結果、NEVクレジット単価は2019年では2万円程度にとどまっている。このままいくと、NEVクレジットの魅力が薄くなり、その売買益がメーカーのNEVシフトを促すインセンティブになりにくい。
また、地場メーカーの多くはNEV規制に配慮しつつも、足元では依然として燃費の悪い車種の生産に注力している。その燃費超過分をNEV生産やNEVクレジットの購入で補うことができる。
2020年4月に公表した乗用車メーカー各社の昨年の燃費実績を見ると、対象メーカー119社のうち、62社が目標未達成となった。ガソリン車の平均燃費(2019年に5.5リットル100km)が2025年の政府目標(4リットル/100km)をクリアするためには、毎年の燃費改善率は7.5%になる。だが、直近5年間の燃費改善率が年間平均2%にとどまっていることから、NEVシフトの加速によって、地場メーカーによる省エネ技術の空洞化が懸念される。
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