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北海道で問い直される貨物鉄道「本当の存在意義」 「意外な使われ方」が新しい付加価値のヒントに

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北海道と本州間の鉄道輸送の存続が議論されている。価格競争だけではない付加価値を見いださなければ、鉄道輸送は縮小のおそれもある。

存続議論がなされている並行在来線(写真:レールアート)

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北海道と本州間の物流5000万~6000万トンの92%は船が担い、貨物鉄道のシェアは8%程度。それでも鉄道で運ばれる貨物の5割近くは農産品・青果物が占め、船での完全な代替は難しい。時間の正確性が求められる本州からの宅配便にも鉄道輸送が欠かせない。だが、北海道ではいま、本当に貨物鉄道が必要なのか、真価が問われる事態になっている。

北海道から本州には、青函トンネルを通って年間186万トンの貨物が鉄道で運ばれている。そのうち47%を農産品・青果物が占める。北海道発の玉ねぎの64%、ジャガイモの37%が鉄道輸送だ。ちなみに、本州からは宅配便を中心に191万トンの貨物が鉄道で輸送される。

「関西以西は航路が一本でつながっていないが、レールで全国がつながっている鉄道は使い勝手がいい。コストも遠距離になるほど割安になる」

ホクレン農業協同組合連合会物流部の岡田拓也課長は話す。北海道発の農産品は収穫期の関係から出荷の繁閑差が大きい。こうした繁閑差は鉄道輸送が吸収している。また、船の輸送では港までトラック輸送が必要で、2024年問題の中で道北・オホーツクから太平洋側の港まで向かうトラックの確保も難しくなる。

年数十億円の維持費を誰が負担するか

こうした中、北海道と本州間の鉄道輸送をめぐって焦点になっているのが、函館線長万部―函館間(約148キロ)の並行在来線の行方だ。2030年度末以降に予定される北海道新幹線の札幌延伸開業に伴いJR北海道から経営分離される同区間をどう維持するかで、議論が紛糾している。

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