そもそも「田澤ルール」は、プロ野球の基本的な規則をまとめた「日本プロフェッショナル野球協約」には載っていない。明文化されたルールではなく、あくまで12球団の「申し合わせ事項」にすぎないのだ。
日本プロ野球選手会は「田澤ルール」に対して、次のように明確に反対を表明している。
「NPBは、選手会に対して、このルール設定について、将来のNPBを背負う優秀な選手が海外に流出するのを防ぐため、やむを得ない措置だと説明しています。もちろん選手会も優秀な選手がNPBに入ってきてくれることを望んでいますが、NPBが導入したこの復帰制限ルールは、プロ野球選手が、日本のプロ野球球団と契約し、年俸を得るという経済活動を著しく制限することから、独占禁止法上明らかに違法であり、選手会は、NPBに対して、このルールの撤廃を求めています」
36歳でドラフトにかかるのか
NPBは、田澤問題が発生したときにMLBと包括的な人材獲得に関する取り決めを行うべきだった。それをせず、「田澤ルール」を設け、それを遡及して田澤本人に適用して事足れりとしたのは、誠に残念な対応だった。
本質論でいえば、人材流出を食い止めるためには、NPBがMLBに匹敵する魅力のある組織になるしかないのだ。その前提で、選手を犠牲にしない取り決めをアメリカやアマ球界と取り結ぶべきだった。
高校生以下では、高校→大学→社会人→プロという従来のルートではなく、高校や大学からアメリカの学校に進み、MLBを目指す若者が増えている。筆者はそういう若者を何人も見てきた。NPBよりもMLBに魅力を感じる若い世代は増えているのだ。
12年の歳月を経て日本に復帰した田澤純一がNPBのマウンドを踏むためには、2年間独立リーグなどでプレーして、2022年のドラフトで指名されるしかない。そのとき、彼は36歳になっている。この年齢でのドラフト指名は史上最高齢だ。
7月13日の会見で、田澤は自身を縛る「田澤ルール」について、「そういったルールがなくなってくれればいいな、という気持ちは、個人的にはあります」と言葉少なに語った。
2019年には、MLBドラフトで1巡目指名が確実視された投手のカーター・スチュワートがソフトバンクと契約した。田澤と真逆のケースだったが、MLBはペナルティを科すようなことはしなかった。
「田澤ルール」は、村の掟を破った人間を村八分にするような旧弊で陰湿な印象を与えるルールだ。NPBは今からでもこのルールを見直して、田澤に日本のプロ野球で活躍する道を拓くべきだろう。野球を愛する一人として、MLBで磨いた田澤の腕がNPBで通用するか、ぜひ見てみたいと願う。
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