大リーガー日本復帰で再燃「田澤ルール」の是非

世界一にも輝いた名選手を縛る"足かせ"

これまでも、MLBへの挑戦を口にしたドラフト候補選手はいた。1998年にドラフトの目玉とされた大阪体育大学の上原浩治は、ドラフト前にMLB挑戦を表明。アナハイム・エンゼルスが獲得に名乗りを挙げたが、巨人は長嶋茂雄監督(当時)が乗り出すなど猛烈にアタック。上原は巨人を逆指名し、1位で入団した。

2008年当時、NPBとMLBは「互いの国のドラフト候補の獲得に動かない」という紳士協定を結んでいた。しかし、当の選手がMLB球団への入団の意向を表明したときは、引き留める方策はなかった。

9月19日に行われた12球団代表者会議では「これを機にアマチュア選手とMLB球団の交渉のルールを作るべき」という意見が出た。当初、NPB側はMLB側と本格的な取り決めをするつもりだったようだ。

だが、10月6日に行われたNPB実行委員会で、ドラフト指名を拒否して外国のプロ球団と契約した選手は帰国後に一定期間のプレー機会を奪うという“ペナルティ”を科す方向で規約が決められることとなった。これが「田澤ルール」といわれるものだ。また、この規約は田澤純一から適用されることが確認された。

社会人野球を統括する日本野球連盟(JABA)の鈴木義信副会長(当時)は、「プロが決めることだから仕方がないが、それでいいのかという思いはある。田澤から運用というのは意図的なものを感じる」と語った。

10月17日にはアマチュア野球3団体が「田澤ルール」の田澤純一への適用除外を要請するが、NPB側はこれに応じなかった。10月30日のドラフト会議では田澤純一は指名されなかった。

争奪戦の果てにレッドソックス入団

この間に、MLB側の田澤へのアプローチが始まった。フィラデルフィア・フィリーズ、アトランタ・ブレーブス、シアトル・マリナーズなど7球団が次々とオファーを出した。

MLBの関係者が入れ代わり立ち代わり面会を求める慌ただしさの中で、田澤は社会人日本選手権で2試合連続完封を記録している。技量だけでなく、精神力も並々ならぬものだった。

12月1日、田澤純一はボストン・レッドソックスへの入団を発表。12月4日には本拠地フェンウェイ・パークで記者会見が行われた。

田澤は「レッドソックスは育成プログラムがしっかりしているし、日本人選手(松坂大輔、斉藤隆、岡島秀樹)や日本人スタッフがいるのも心強かった」と語った。

この会見のあと、レッドソックスのセオ・エプスタイン・ゼネラルマネージャー(当時)は「最高レベルの野球に挑戦したいという彼の希望に、われわれがチャンスを与えただけ」とコメント。MLBでは、田澤との契約はキューバから亡命した選手との契約と同じ性質のもので、問題はないという認識だった。

田澤を送り出した新日本石油ENEOSの大久保秀昭監督は「パイオニアとして今後の日本野球界の発展に力を尽くしてほしい」と語った。また、前出の鈴木義信JABA副会長は「ルールを破っていくのではないのだから、正々堂々と頑張ってほしい」とエールを送った。

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