つなぐ信金、支える信組、地域金融機関の奮闘 広域のビジネスマッチングから芸者ローンまで

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料亭で食事をした客が、芸者と気軽に話ができるような場を作りたいと、乃り江さんが2015年に浅草に開いたバー「KASHIMA」。今でこそ馴染みの客でにぎわう店になったが、開業までは苦労した。いくつもの銀行に融資を申し込んでみたものの「うちでは扱えない」と冷たくあしらわれるばかりだった。

そんなとき、乃り江さんが作成した事業計画書を読み、「計画書から熱意を感じた。融資を検討します」と応じたのが第一勧業信用組合だった。信用保証協会が保証しない融資(プロパー融資)で、乃り江さんは約2200万円を借り入れることができ、なんとか開業にこぎ着けたという。

「だから、新たな借金はよしましょう」

常連客が少しずつ増えてきたところへ直撃したのが新型コロナだ。店は休業、芸者の仕事も途絶えた。生活がすぐに困窮するほどではなかったものの、無担保で借りられるのであれば借りておこうかと考えた乃り江さんに、第一勧業信用組合の担当者は「借りないほうがいい」と諭した。

担当者は、「月々12万円払ってもらっている返済プランを見直しましょう。とりあえず半年間、返済を猶予します。だから新たな借金はよしましょう」と話したという。

緊急事態宣言の解除後に再開したバー「KASHIMA」。日本の古典芸能を学びに来ているという中国人留学生が店にいた。写真右が乃り江さん(記者撮影)

「まるでファミリーを支えるような姿勢で応援してくれている」と乃り江さんは語る。

稼ぐ場であるお座敷は、新型コロナ前の6~7割程度。ほとんどの芸者は、昔ながらのひいきの客にどうにか支えてもらっている状態だ。「でも、花街はもともとそういう場所。原点に返ったつもりで出直そうと芸者衆も燃えています」(乃り江さん)。

もちろん、大手銀行とビジネスモデルも違えば主要顧客も違うため、一概に信金や信組と比較することはできない。ただ、顧客の立場に立って真摯に向き合う姿は金融機関の規模に関係なく、1つの姿勢として一考に値するのではないだろうか。

野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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