つなぐ信金、支える信組、地域金融機関の奮闘 広域のビジネスマッチングから芸者ローンまで

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そんな折、友人の紹介で出会ったのが第一勧業信用組合だった。

「このプランだったら無理なく返済できるかもしれない」「この計画なら追加の融資が受けられますよ」。担当者たちは経営プランを何度も練り直しては再建の方策を共に考えてくれた。「銀行にはない温かみがあった。第一勧信の皆さんに私は生かされたんです」(白坂さん)。

そうした経験を踏まえて、『銀座の流儀』など複数の著書を出して、知る人ぞ知る銀座のママとなった白坂さん。地方銀行から講演を頼まれることもあり、「地方銀行が生き残っていくには、どうすればいいでしょうか」と質問されることも多いという。そんなとき白坂さんはこう答えるようにしている。

「大手の銀行とは違うサービスをすること。地元に密着し、濃い人間関係を築くこと。この2つが実践できれば道はひらけるかもしれません」

これは、白坂さんが第一勧業信用組合の姿勢から学んだことだ。

「絶対にヤミ金に手を出すな」

もう1つ、通常の銀行から融資してもらえていないのが花街の芸者たちだ。新型コロナで「お座敷」の仕事がなくなり、収入が途絶えた。そんな芸者たちに「絶対にヤミ金に手を出すんじゃないぞ、資金はうちで何とかするから」と浅草に足を運んで直接言いにきたのが、第一勧業信用組合の新田会長だった。

4月13日、浅草の事務所の大広間に浅草芸者、十数人が集められた。第一勧信東浅草支店長が配った資料は「芸者ローン」。国の持続化給付金や、東京都の協力金が振り込まれるまでの間をしのぐための「つなぎ融資」で、100万円を無担保で借りることができた。

今回のコロナ禍で芸者ローンを申し込んだ千華さん(中央)。乃り江さん(右)は第一勧信から「申し込まないほうがいい」と言われた(写真提供:乃り江さん)

申し込んだ芸者9年目の千華さんは「私たち芸者は金融機関からお金を借りられないものだと思い込んでいた。芸者ローンはとても助かった」と語る。

一方、申し込みを検討したものの、逆に「申し込まないほうがいい」と諭された芸者もいる。芸者21年目の乃り江さんだ。

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