教育学者・内田良「ウィズコロナ時代の学校論」 リスクと正しく付き合っていく方法

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大事なのは学校生活のなかでも減らせるリスクは減らし、リスクを回避しながら、コミュニケーションのなかで許容のラインを決めていくこと。

感染のリスクをゼロにはできないにしても「安全・安心」を最優先に考え、それを土台にあらゆる教育活動を構想していくということに変わりはないわけです。

正しく恐れるを

新型コロナにおける子どもたちの心理的な影響のサポートについては、「正しく恐れる」ことを教えていくのが現状に即しているように思います。

僕のもとにも「学校を再開してほしくない」という声がたくさん届きました。その気持ちもよくわかります。

とはいえ、大人たちが学校を再開したらダメだと必要以上に言い続ければ、不安が増幅し、それが子どもに伝わります。

すると学校生活が不安でたまらなくなり、「◯◯さんがせきをしていた」「◯◯ちゃんに抱きつかれた」など、ささいなことから不安の連鎖が始まるおそれがあります。

リスクを回避しつつも、私たちはそれをどこかで受けいれざるをえません。子どもに対しては不安をあおらない形で、なおかつ無防備になってもいけないことを教えていく。

そして、学校の指導が理不尽だったり、おかしいと思ったときは、おかしいと声を上げるようにしていくことが大事でしょう。

一方で、学力への不安から早く学校を再開してほしいという声もたくさん聞かれました。学校が臨時休校になったことによる教育学者の1番の懸念も、やはり学力の格差です。

日本はOECD諸国のなかでもICTに遅れをとってきた現実がありますが、今やるべきなのは、家庭学習を可能にするICT環境の整備を急ぐことです。

具体的には、Wifiルーターやパソコン・タブレットを貸し出すなど、学べない環境にある子どもたちのサポートに重点的に予算を投じ、双方向型オンライン授業の環境を整備する。

コロナ禍のなかでその重要性は、ゆるぎないものになっていると言えるでしょう。教育学者が懸念する学力格差の問題も、これでだいぶクリアできるはずです。

この先も新型コロナの第2波、第3波があるかもしれません。あるいは別の感染症が発生する可能性もあります。台風などの自然災害や季節性インフルエンザなどもあります。

けれども、オンライン授業が整備されていれば、何かあったらいつでも「ステイホームでいいよ」と言えます。もちろん、家庭内に置かれた子どもの状況が苦しかったり、虐待などが疑われる場合は話は別です。

一方で教育の使命としては、同じような教育を与えて、そのなかで努力を重ねていくというのが大きな枠組みとしてあるので、設計上は学校に来てもらうことも大事です。

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