日本と中国「英語を学ぶ環境」の決定的な差 今春ようやく小5から義務化されたが周回遅れ

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日本では長らく「英語よりも国語と漢字を学べ」(藤原正彦『国家の品格』)という「保守思想」が支配的で、小学校での英語教育導入が進んでこなかった。

しかし人口減少が進む日本において、飯の種をつくるためには海外市場への進出が必至であり、国際社会の共通言語は英語である。

実は中国も小学校の英語教育導入の際には、多くの批判や反対論が巻き起こった。

中国は比較可能な2006年以降、TOEFLのスコアで一貫して日本をリード
2001年の小学校英語教育の本格導入以降、留学生の数は爆発的に伸びている

中国の小学校の英語教育導入は、文化大革命直後の1978年までさかのぼる。

当時の中国は、鄧小平が主導した改革開放路線の下、工業、農業、科学技術と国防の「4つの近代化」を柱に、市場経済への移行が急ピッチで行われた。

しかし文化大革命の影響で、当時の人材不足は深刻で、中国は文化大革命10年間の空白を取り戻そうと教育に力を注いだ。小学校教育は全国に普及しておらず、9割の子どもが入学しても、そのうち6割しか卒業できないと言われる状況だった。また小学校の教員は半数が無資格で、地域により5年制と6年制がバラバラであった。

全国的な義務教育が実施され、義務教育は6歳から9年間と定められたのは、この後1986年まで待つことになる。

中国が小学校の教育課程に、外国語教育の一環として英語教育を導入したのは1978年だ。教育環境の整っている学校では、小学校3年生から英語教育を開始し、そうでない場合には初級中学(日本の中学校にあたる)から英語教育を開始した。

当初は批判や反発が殺到した

しかし政府の肝いりで始まった小学校での英語教育だったが、教育現場などから批判や反発が殺到し、結局ほとんどの地域で実施には至らなかった。

当時の中国の批判や反対の理由を見てみると、いま日本の教育現場にある批判や反対の声とまったく同じで興味深い。

まず、中国で起きた批判の1つが「母国語の習得の妨げになる」であった。

つまり、標準中国語ですら十分にマスターできていない年齢で、英語教育を導入するのは「時期尚早」であるということだ。

また、「いったい誰が英語を教えるんだ」という反発もあった。当時は英語教育をできる教員が中学校でも不足している状態で、英語教育を小学校まで広げるのは到底無理だということだ。

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