「中学受験」親が子どもより先に音を上げる過酷 漫画「二月の勝者」が描く受験の現実(後編)
<第5集>コミック帯文言「その目標に届く可能性があるのは夏の終わりまで。」
夏休みが始まりしばらくすると、自習室の空気が変わってくる。こうして子どもたちは少しずつ本当の「受験生」になっていく。
しかしそんな中でいつまでも緊張感の足りない生徒がいた。その態度がまわりの真剣な生徒をもイラつかせる。まわりに迷惑をかけた罰として自習室使用禁止を言い渡されると、むしろ喜ぶ始末。
第5集の注目生徒「石田王羅」
徹底したやる気のなさでみんなからあきれられる石田王羅を、塾講師・橘勇作が擁護する。「だってあいつ、毎日 塾に来てるじゃん」「そもそも『小学生が毎日塾に来て座ってる』こと自体が、すごくね? すごいんだよ! だから、うちの塾に来ている奴らは1人残らず、すごい!」と断言する。
橘は黒木とよく対立し、漫画の中では浅はかな塾講師の役割を担いがちだが、実は問題児とされる子どもたちの気持ちがよくわかる、心優しい塾講師なのだ。たしかに失敗も多い橘だが、このシーンで、私は橘を好きになった。
いかに幼く勉強に向いていないからといって
王羅は幼いころに父親を亡くし、母と祖母との3人暮らし。桜花ゼミナールを学童代わりに利用している。母親は忙しく、勉強を見るどころか塾弁をつくる余裕もない。お弁当代として渡されたお金を、王羅はカードゲームに使ってしまう。
黒木は王羅に桜花ゼミナールと同系列の個別指導塾を勧める。王羅のような幼いタイプにはそのほうが向いているとの考えだ。黒木は佐倉に言う。「『中学受験をしよう』と決めたご家庭にはいろんな事情がある。その生徒がいかに幼く勉強に向いていないからといって……『塾に通わない』理由にはならない」。
しかしそれを聞いたフェニックスの灰谷は、黒木のことを「子どもを裏切り食い物にする非道い講師です……!」と批判する。
一方、「凡人こそ中学受験を」と言われて入塾した三浦佑星の両親は、今やしっかりと佑星を支えようとタッグを組んでいる。母親が「どこにも受からなかったとしても、順は順です……!」と叫んだ島津順は今や、取っ組み合いをしていた上杉海斗と親友のようになっている。中学受験は人間を変える。
桜花ゼミナールの夏合宿では、全然違うキャラの直江樹里と柴田まるみが同じクラスになり、急接近していた。樹里は天才肌の奔放キャラ、まるみは引っ込み思案で自信がもてないタイプだ。2人とも女子学院を目指している。
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