「中学受験」親が子どもより先に音を上げる過酷 漫画「二月の勝者」が描く受験の現実(後編)
<第6集>コミック帯文言「運命を分ける秋が来る。」
夏合宿には参加していなかった黒木。合宿から戻る生徒たちを、パーカー姿のまま陰から見守る彼の手には、くしゃくしゃになった数学の答案が握られている。中学受験生のものではなさそうだ。
ちゃぶ台をひっくり返したような状態で食事が散乱するシーンを回想しながら「あんな状態の後に、このプリントを埋めたのだとしたら、君は本当に頑張った。君も必ず救うし、あいつら(合宿から帰ってきた塾生)も『必ず』合格させる」とつぶやく。「君」とは誰か……。
夏休み明けの模試の成績では、桜花ゼミナール吉祥寺校のほとんどの生徒が偏差値を落とした。みんな頑張ったのだけれど、世の中の中学受験生もみんな頑張ったのだから、相対的な偏差値はなかなか上げられない。黒木はそれを見越して、夏休みの努力の成果は直後の模試では表れないと伝え、先手を打っていた。
「ここからは親の……狂気」と黒木。
文化祭や学校説明会も目白押しになり、いよいよ志望校絞り込みも佳境を迎える。第1志望ではないある学校の文化祭をのぞいて満足げだった山本香苗の母親はその帰り道心の中でこうつぶやく。
「ずっと憧れだった第1志望校西洋西部女学院。偏差値が20も足りなくてその差をなんとか埋めようとあがいた2年間だった。けど……素人の私ですらさすがにわかる。最初の思いを貫くことも大事だけど、そろそろ、現実を受け止めなければならない。私にできることは――」
仲良し3人組に漂う不穏な空気
<第7集>コミックカバー文言「ここから親子ともに皆極まっていきます。」
今川理衣紗と浅井紫と山本香苗は仲良し3人組。しかしそこに不穏な空気が漂い始める。
第7集注目生徒「今川理衣紗」
理衣紗は、香苗のシャーペンを隠したり、香苗の答案にわざと悪い点をつけたりと、香苗にいじわるをするようになる。香苗に成績を抜かされてしまったからだ。理衣紗は香苗と距離を取る一方で、お人好しの大内礼央に近づく。理衣紗のペースに巻き込まれた礼央は、そのせいで橘に怒られてしまう。理衣紗の存在が、教室内の女子同士の人間関係をややこしくしていく。
佐倉がその異変にいち早く気づく。それを聞いた黒木は「小学生女子は人間関係で簡単に成績が落ちます」と言いながら、即座に席替えを実行した。効果はてきめん。香苗にも礼央にも笑顔が戻った。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら