米ナイキが苦難の末に学んだ、CSRとは?

10の「メガリスク」をビジネスチャンスに変える法

こうしたリスク面への配慮を怠って苦境に陥った企業は、他にも数多く存在する。特に有名なのが世界的スポーツメーカーの米ナイキ社だ。

今でこそ同社はCSRの優等生で、CSR報告書の評価も非常に高い企業として知られている。だが、ここまでたどり着くには、企業の果たすべき責任を考慮せずビジネスを行い、経済的な大打撃を受けた苦い経験があった。

ナイキのビジネスモデルは、スポーツ用品・衣料品のデザイン・開発は自社で担当し、製造は低コストのアジアなど発展途上国の工場に委託するというものだ。これにより多くの利益をあげ成長してきた。しかし、そのグローバリゼーションを活用したビジネスモデルも盤石ではなかった。実際は、発展途上国の労働者からの「搾取」もあって、成り立っていたのだ。

1997年、ナイキが委託するインドネシアやベトナムといった東南アジアの工場で、低賃金労働、劣悪な環境での長時間労働、児童労働、強制労働が発覚。この事態に米国のNGOなどがナイキの社会的責任について批判した。世界的な製品の不買運動が起こり、経済的に大きな打撃を受けた。

同社は企業の責任として、サプライヤーの労働環境や安全衛生状況の確保、児童労働を含む人権問題に取り組まなければならないことを、身をもって経験した。これを契機にCSRへの配慮を進めていったのである。

低人件費に群がった欧米のアパレル企業

CSRを考えるうえで、最近の大きな事例としては、バングラデシュの「ラナ・プラザ」倒壊事故が代表的だろう。2013年4月24日に首都ダッカ近郊のサバールで、8階建てビル「ラナ・プラザ」が突如倒壊。1133人が死亡し、同国過去最悪の産業事故となった。

このラナ・プラザには、5つの縫製工場があり、従業員3000人以上が働いていた。もともとは5階建て商業用ビルとして建築されていたが、複数の縫製工場の入居に対応するため、さらに3階分を違法に建て増していた。崩壊前日には建物に亀裂が発見され、警察から避難勧告もされていたが、ビルのオーナーはそれを無視。従業員は倒壊の恐れがあるビルの中で強制的に働かされ、被害にあった。

バングラデシュの多くの工場では、防災設備や労働環境の不備が以前から指摘されていた。実際、工場火災によって過去およそ5年間の累計で500人以上が亡くなるなど事故は多発している。

同国の人件費は世界最低水準ということもあり、衣料品輸出額では中国に次いで世界2位。輸出の80%を主要産業の繊維製品が占める。これは世界中のメーカーが安い人件費を求めてこの国を衣料品等の生産工場として活用していることを意味する。

実際、災害が発生した衣料品工場は、多くの欧米アパレル企業の業務委託先となっていた。欧米企業は低コストで製品を作り、バングラデシュの労働者は劣悪な労働環境や強制労働といった搾取の構造があったのだ。

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