米ナイキが苦難の末に学んだ、CSRとは?

10の「メガリスク」をビジネスチャンスに変える法

CSR活動のバランスが崩れると、こうした災害に見舞われ、莫大な不利益を被り、企業の屋台骨を揺るがす事態につながる恐れがあるのだ。

もともとBPは、トップダウンでCSRに取り組み、その効果についても深く理解していた企業として有名だった。2001年にそれまでの社名であるブリティシュ・ペトロリアムをBPへ変更。「ビヨンド・ペトロリアム(石油の先へ)」と大々的にキャンペーンするなど、環境に配慮した事業に力を注ぎ、2005年、2006年の2年連続で、カナダのコーポレートナイツ社が主催する「世界で最も持続可能な100社」に選出されていた。

代替・持続可能なエネルギー開発、省エネ・効率化対策、温室効果ガス排出量削減、危険物質の管理・削減、環境マネジメントシステムといった環境面の取り組み、さらに社会面でも従業員の満足度を高める活動などにも積極的だった。BP関係者によると「社内ではCSRへの取り組みが、企業に利益をもたらす有効なものと理解され推進できていた」という。

コスト削減がもたらした420億ドルの損害

しかし、2007年5月にトニー・ヘイワード氏がCEOに就任すると、BPは一変。コスト削減、短期的な利益重視の路線に変わった。

トップダウンでのコストダウン要請で、同社では経済性が優先されるようになった。そのため社会・環境に対する配慮が不足し、サプライチェーンを含めた、さまざまな部分でバランスが崩れていった。

ロンドンにある国際運輸労連の報告によると、ディープウォーター・ホライズンの事故の7つの要因のうち、2つが技術的要因、5つは人的要因とされている。たとえば、作業場の安全衛生確保のために当然設置されるべき安全衛生委員会は未設置。その上、作業者は専門知識が不足している低賃金労働者で、適切な訓練も受けていなかった。

設備面でも、作業工程の延長による追加費用を避けるために、協力会社の安全性評価を拒否するなど、安全確保を怠っていた。こうした複数の要因が爆発災害、原油流出の発生につながったのだ。

事故直後にBPの株価は半値まで下落。英エコノミストの記事によると、現場周辺の浄化費用、補償金などの420億ドル(約4.3兆円)を賄うため、配当を凍結し、380億ドル分の資産も売却した。

この資産には、自社保有する海上プラットフォームと製油所の半分が含まれていた。訴訟は今後も引き続き行われ、支払額はさらに膨れ上がる可能性もある。このようにBPは、財務的な負担とともに企業の信頼を取り戻すのに時間がかかっている。

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