ベビーシッターが21年見続けたある家族との絆 小学2年生で「サービス休止」を伝えられたが

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勝也くんが中学に上がる際には、父親は、「子どもも中学生になればもう1人でいても大丈夫だろう」と、小学校卒業とともにシッターの卒業を考えていたそうですが、勝也くんは父親に「お姉ちゃんはいつ来るの?」といつも聞いていたと言います。父親もなかなか“卒業”と言えず、勝也くんの気持ちを優先してサービスの続行を決断。

勝也くんが中学入学後も明子さんはこれまでどおりに父親が不在の日にサービスへ行き、朝にはお弁当を作って持たせて「いってらっしゃい!」と見送っていました。

夜にサービスに入っている日には、勝也くんは塾の途中でもいったん帰宅して一緒にご飯を食べてまた塾に行くといった具合だったそうです。

「一緒に食事するって大きくなってからもとても大事なんです。一緒に座って、家族で話をしながら食卓を囲む時間って心を育てるのにとても大切なことなんです」と明子さん。

明子さんがいない日は、副菜のない父親の男飯かコンビニご飯だったそうですから、一緒に食事ができる安心する存在がいること、栄養バランスの取れた食事ができることは勝也くんにとって、何よりうれしいことだったでしょう。

3.11のときには、明子さんのもとに勝也くんから何度も電話がありました。

「お姉ちゃんは今仕事中ですぐにそっちに行けないから、まずはマンションの管理人さんや近所のお友達のお家に行かせてもらいなさい。お父さんには自分で連絡するようにね。自分でカギ閉めれた? 携帯持った? 充電器持った?」と促し電話を切ったといいます。

勝也くんにとって、何かあったときにいちばん最初に頭に浮かぶ存在が、明子さんなのです。

ママが本当に大好きだった

「友達はTVと飼い猫だったあの子にとって、お母さんとの思い出話ができる唯一の人が、私なんですよ」と明子さん。

「ママ、自分で太ってる太ってるって言ってたけど、そんなことないよね~」なんて他愛もない話をふとしてみたり、明子さんも、「ママがこう言ったときには、お姉ちゃんはこう思ってたんだよ」とか、「クリスマスにサンタさんが来た!と言って勝也がすごく驚いたんだってママが言ってたよ」などと、時折一緒に母親との思い出を振り返っていたと言います。

父親不在の中で、ふとお母さんの話をしたくなるとき、ちょっとした思い出を語り合える相手がいるというのはとても心が落ち着くものです。それに父親に母親の話をするというのも少し照れ臭かったのかもしれません。

明子さんは結局、勝也くんの大学受験が終わる頃までサービスへ行っていました。

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