中国の新興カフェチェーンでアメリカのナスダック市場に上場する瑞幸咖啡(ラッキン・コーヒー)の不正会計事件をめぐり、中国の関係当局が創業者で董事長(会長に相当)の陸正耀氏の刑事訴追を視野に入れていることが、財新の独自取材で明らかになった(訳注:不正会計発覚の経緯は『中国・新興カフェ「深刻な不正会計」のつまずき』を参照)。
内情に詳しい複数の関係者によれば、中国国家市場監督管理総局と中国財政省が相次いでラッキンの調査に着手し、陸氏が粉飾を指示した電子メールなど多数の証拠を押さえたという。同社は5月12日、CEO(最高経営責任者)の銭治亜氏とCOO(最高執行責任者)の劉剣氏の解任を発表したが、陸氏は董事長の座にとどまっていた。
ラッキンは登記上の本社は英領ケイマン諸島で、上場先はアメリカだ。中国の証券監督当局による直接の監督対象ではない。だが今年3月1日に施行された「改正証券法」は、「中国国外での証券発行およびその取引によって中国国内の市場秩序を乱し、国内の投資家の合法的権益に損害を与えた場合は、本法の規定に従って法的責任を追及する」と新たに規定した。
不正会計の罪はいくら強調しても足りず
「この条文は、ラッキンのような企業に対しても中国の関係当局が管轄権を持つことを意味する。なぜなら経営実体はすべて中国国内にあるからだ」。当局に近いある関係者は、財新記者にそう解説した。この関係者によれば、ラッキンに対しては改正証券法だけでなく「会計法」の罰則も適用可能だという。
今年4月2日、ラッキンは2019年4月から12月までの売上高の半分近くにあたる22億元(約339億円)が不正に水増しされていたと発表。それをきっかけに、ナスダックやニューヨーク証券取引所に上場する中国企業に対する強い不信が投資家に広がった。アメリカ政府や議会、アメリカ証券取引委員会(SEC)は中国系上場企業の経営の透明性不足を厳しく批判。ナスダックは中国企業を念頭に置いた上場ルールの厳格化を打ち出した。
「ラッキンの不正行為は中国のスタートアップ企業がアメリカで資金調達するための道筋を壊し、中国企業の海外での資金調達コストを増加させた。その悪影響の罪はいくら強調しても足りない」。前述の当局関係者はそう見解を語った。
(財新記者:沈欣悦)
※原文の配信は6月6日
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