1兆円市場?クラウド会計ソフトは儲かるか 利便性を武器に急成長するfreee

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この市場では少し古い話だが、2007年に当時、ライブドアの子会社だった弥生会計が投資ファンドに710億円で売却されている。同社は約80万所の顧客を持っていたという。かなりの市場シェアだ。

「当面は中小企業の中での市場シェア拡大を目指します。毎年、日本国内では約20万の事業所が誕生しています。まずは新規の事業所の有力な選択肢に入り、既存事業所に関しても数十年も弥生会計を使っている企業は厳しいかもしれませんが、数年と月日が浅い事業所からの乗り換えを狙っていければと思います。今後5年で登録事業所数100万所を目標にしています」

弥生会計が築いた会計ソフト市場をクラウドで切り崩すfreee。その圧倒的な利便性と手堅いビジネスモデルに、死角はないと言えそうだ。

【梅木雄平のスタートアップチェック (各項目を1~5で採点)】
●経営陣:4.2 いぶし銀の印象を受ける佐々木大輔氏は法人向けサービスで着実に売り上げを積み重ねていけそうだ。マーケティングセンスも高い。
●市場性:4.2 法人向け会計ソフト市場はすでに弥生会計の存在である程度の規模が証明されている。第1弾で紹介したマネーフォワードは個人向けも狙っているため、法人向けに特化したfreeeの市場はマネーフォワードが狙う市場よりもやや小さいということで、マネーフォワードとの比較で少しレーティングを下げる。 
●利益率:4.3 法人向けサービスで会員の有料化率は高いと推測。月額課金サービスの中ではスイッチングコストも段違いに高いサービスであると考え、会社が存続し続けるかぎり使われ続ける可能性も高い。高利益率が期待できる。 
●競合優位性:3.9 クラウド会計市場ではユーザーから好評を得ている利便性により、ここ1年で急激に事業者数を伸ばしてきた。マネーフォワード for Businessなどの後発も現れているが、普遍的な利便性を追求したプロダクトの競合優位性は比較的高いといえる。  
●海外展開力:3.2 海外展開は直近での予定はないが、非英語圏から攻めたいと考えているようだ。具体的には韓国や台湾、東南アジアでの展開をもくろむ。英語圏ではFinTech特集第1弾マネーフォワードのときに紹介したINTUITという巨人がいるが、非英語圏では存在感のあるグローバルプレーヤーはまだいない。
●総合点 :4.1 非常に手堅いサービスだと感じた。法人向け会計市場はマネーフォワードの足音も聞こえてくる市場だが、法人向け特化とサービスの利便性、先行者優位性の観点で現状はfreeeに軍配があるといえそう。
●予想EXIT: 2018年ごろの上場
●推定時価総額:約300億~500億円
●推定根拠:2014年3月時点で登録事業者数約7万。5年後に100万を目指すとあり、それくらいのペースで登録事業所数が伸びれば、有料会員化率の高さを想定すれば、かなりの売り上げが立つ見込みがある。法人アカウント1社年間売り上げ2.4万円。個人アカウント年間1.2万円。有料アカウント5万社ずつ獲得したとすると、法人で年間約12億円、個人事業主で約6億円の売り上げ。利益率は登録社数が増えるほど上がるモデルで、株式市場から高い評価を得やすい企業であると考える。

 

梅木 雄平 The Startup編集長

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うめきゆうへい

慶應義塾大学卒業後、サイバーエージェント子会社にてベンチャーキャピタル業務などに従事。複数のスタートアップ企業での事業経験を経て、2011年フリーランスとして独立後2013年に株式会社The Startupを設立。スタートアップ業界のオピニオンメディアThe Startup編集長を務める。著書に『グロースハック』がある
 

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