現代に子どもを育てる親たちはワガママ? 子育て阻む「言論」の壁
長男(1)が認可に入れなかったフリーランスの女性(39)には不安もある。
「大規模な保育園ができてくれたらどんなにありがたいか。でも、この池田山の地域は、母親が家で子どもの面倒を見るべきだと考えている人たちばかりなのでしょうか」
杉並区では昨年2月、認可保育園に入れない窮状を訴えて抗議集会を開いた母親たちを非難する意見が、田中ゆうたろう区議のブログをきっかけに表面化した。
「『お願いです。私達の子育てをどうか手伝って下さい』、これが待機親に求められる人としてのマナー、エチケットというものではなかろうか」
田中区議は、子どもは基本的には親が家で育てるもので、最低限の経済力や人間力の準備、覚悟がなければ子どもを持つ資格はない、と主張。寒空の下での抗議行動は、赤ちゃんにとって残酷だ、とも述べた。
公共交通機関での赤ちゃんの泣き声をめぐる論争は何度も起きているが、周りに迷惑をかけるという点だけでなく、「親の都合で連れ回される子どもがかわいそうだ」という視点で論じられることがある。
漫画家のさかもと未明さんは12年、飛行機内で赤ちゃんの泣き声に耐えられずに抗議した経験を書いた記事で、こうも述べた。
「乳飲み子を飛行機に乗せるのってどうかと思うわけよ。(中略)気圧の変化とか、大人でもつらいのに大丈夫なの? あの泣き叫んでいた赤ちゃんは、つらくて怖かったんだと思う」
今年1月、新幹線で泣く赤ちゃんに「舌打ちするくらいはいい」とツイートした元ライブドアの堀江貴文さんも、こう続けている。
「なく子にイラつくんじゃなくて親の対応にイラつくんだよね」
3月、ネット上のマッチングサイトに登録していたベビーシッターに預けられた2歳の男の子が亡くなった事件では、元衆院議員の鈴木宗男・新党大地代表が自身のブログで、
「子どもを簡単に知らない人に預けるのはあまりにも安易なやり方で無神経」
「子どもを預けて3日間、何をしていたのか」
と母親を批判した。
あなたは親なのに、子どものためを思っていない。子どもを優先できない事情などあるはずがない。そう断罪されることが何よりも、子育てをしている親の心を打ちのめすのではないだろうか。