代官山 蔦屋書店は、ネットを超えた本屋さん 空間とつながりを提供する新しい書店のあり方

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本のテーマで人をつなぐ出会いの場

もうひとつ、代官山 蔦屋書店が極めてネット空間と近いと感じた理由に、毎月、数々開催されているイベントがあります。代官山 蔦屋書店のウェブサイトをクリックすると、まず目に飛び込んでくるのは、その多彩なイベント情報です。

私が実際に代官山 蔦屋書店に行ったときも、店内3カ所でそれぞれ50人程度のお客様を集めたイベントを、同時に開催していて驚きました。そして、お客様が所狭しと座っているひとつのイベントをのぞいてみたところ、スペイン語を話す人が4~5人、前に座っていて、グラスをみんなで回しながらワインを飲み、チーズを食べているのです。作り手が実際のワインの作り方を説明してワインの知識を共有しながら、実際にスペイン産のワインを飲んでいました。

「イベントを通じて、知の蓄積だけではなく、人のつながりを作りたいのです。集まってくださる方々とのつながりができて、それをきっかけに、次もこんなイベントをしたい、こういう商品をおいてほしいと、また新しい出会いにつながっていく。そうやってビジネスも広がっていきます」

上田店長いわく、年間365を超えるイベントが開催されているそうです。

ネット空間では、膨大な情報の海の中で、SNSなどを通して同じテーマに興味を持った人たちがつながっていきます。そして、そのテーマに基き、新しいコミュニティが形成されていきます。書店がネットと大きく違う点は、つながりがFACE to FACEをベースにしている点と、そこに居心地のいい時間と空間がある点です。

そして、その興味、関心をつなぐツールの入口も、やっぱり本なのです。先日、代官山 蔦屋書店である本を買ってレジでお会計をするときに、スタッフの方に「この本の著者の方、今度こういうテーマでイベントをされますが、ご参加されませんか?」と聞かれました。

本を買った時点で、このテーマに興味があるとか、この著者に興味があるとか、すでにスクリーニングがされていますから、選んだ本のテーマに合ったコミュニティへのお誘いが来るのは、とてもいい流れです。そして、そこにはネット空間とは違うリアルなコミュニケーションが発生しているのです。

モノにあふれた時代の店舗のあり方

モノにあふれた時代、モノを売る「店」という空間のあり方が再定義されてきています。今までのように、たくさんのモノを並べ、モノに値段をつけて、ほかの場所でも買えるモノを販売していくだけでは商品の魅力は伝わりませんし、売り上げも伸びていかない。情報量もコストもネット空間にはかないません。特に書店は、本という現物の商品とともに情報を届けているという性質からして、この傾向は顕著に現れているのでしょう。

お店に来ていただくお客様が、単純に商品を買いに来ているということを超えて、何を求めてわざわざ書店に足を運んでいるのか、その先に顧客が求めている新しい店舗像が見えてくるのだと思います。

山崎 大祐 マザーハウス 副社長

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やまざき だいすけ / Daisuke Yamazaki

1980年東京生まれ。高校時代は物理学者を目指していたが、幼少期の記者への夢を捨てられず、1999年、慶応義塾大学総合政策学部に進学。大学在学中にベトナムでストリートチルドレンのドキュメンタリーを撮影したことをきっかけに、途上国の貧困・開発問題に興味を持ち始める。2003年、大学卒業後、 ゴールドマン・サックス証券に入社。エコノミストとして、日本及びアジア経済の分析・調査・研究や各投資家への金融商品の提案を行う。2007年3月、同社を退社。株式会社マザーハウスの経営への参画を決意し、同年7月に副社長に就任。副社長として、マーケティング・生産の両サイドを管理。1年の半分は途上国を中心に海外を飛び回っている。

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