ネット空間なのに、顔を合わせるリアル空間のよう
もうひとつ、前述のイベント「マザーハウスカレッジ」を開催していたときに、気づいたことがあります。それは、書店というのは、極めてネット空間に近い、それも、ネット空間を、FACE to FACEが存在するリアルな空間に落とし込んだイメージに近い、ということです。
知の蓄積、その知と知をつなげる、それをベースにネットワーキングをする。そうした行動はネット空間でできることのように思えます。しかしそれを、リアルな世界に落とし込んでみたときに、いちばんイメージが近いのは書店ではないかと考えています。本来であれば、書店では、本というモノを通して、実は情報を提供しています。もちろん、コレクター的にリアルな本という存在そのものが好きな人もいますが、多くの人は本に書かれている情報を買いに来ています。
だとすると、書店に来て、別の形で情報を買うことがあってもいい。そのいちばんわかりやすい整理の仕方が、代官山 蔦屋書店で実際に行われています。つまり、本やDVD、音楽などの媒体別にモノを並べるのではなく、テーマ別に媒体を並べているのです。
代官山 蔦屋書店のひとつの特徴は、文庫、新書といった本の種類別ではなく、生活ジャンルによって本が分類されていることにあります。たとえば、3号館1階にある料理本のコーナーも普通の本屋さんとはまったく違う商品構成になっています。
「料理の本がある、たとえばお米の本があったら、おいしいお米を食べてもらったほうが早いということで、おいしいお米を置いている。そうしたら、お茶碗を置いて、次は土鍋を置いて、みたいに広がっていく。このコーナーを、元女性ライフスタイル誌の編集長の方がコンシェルジュとして、作っているのです」
と、上田店長は言います。
同じくトラベルコーナーには、旅行情報誌や旅行記はもちろん、その国の文化や歴史がわかる興味深い本がセレクトされて並べられているほか、国をテーマにした物販のイベントコーナー、さらにはその勢いで旅行を申し込めるトラベルカウンターまで常設されています。
また、こちらのコーナーのコンシェルジュを務める方も、世界100カ国を旅してきたトラベルライターさんで、旅行をテーマにしたイベントを開催したり、実際に旅行を企画され、添乗員として一緒にツアーに同行もするのです。
この売り場の拡張の仕方は、ネットでのEC販売と似ています。検索された情報を中心に、その情報にかかわる商品をお客様に提案していく。あくまで本はテーマの中心で情報を整理するものになっていて、売る商品としてはいろいろと広がりを持っているというのは、面白い考え方です。
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