コロナ抗体検査がまだ不完全でも絶対必要な訳 感染状況を推定しつつ感染爆発を防ぐために

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興味深いのは、抗体陽性率について国ごとに大きな差があることだ。日本・中国などアジア諸国で低く、欧州は高い。注目すべきはアメリカだ。ニューヨーク州が12.3~27.0%と高いのに対し、カリフォルニア州は1.5~4.1%と低い。

新型コロナウイルスの感染拡大には、ウイルス要因、環境要因、宿主要因が関係する。抗体保有率を国際比較する場合、この3者の影響を考慮しなければならない。ところが、ニューヨーク州とカリフォルニア州では環境要因と宿主要因の差が与える影響は軽微だ。両州で流行した新型コロナウイルスのタイプが異なっていることはわかっている。アジア型と比較して、欧州型は感染拡大しやすく、毒性も強い。

アメリカのドレクセル大学の報告によれば、ニューヨーク州で遺伝子配列が判明したウイルスのうち78%が欧州型だったが、カリフォルニア州では22%だった。両州の抗体保有率の差はウイルスの突然変異で説明がつくかもしれない。このように、抗体検査は母集団の差を反映する。

では、日本で抗体保有率に大きな違いがあることはどう解釈すればいいだろう。厚労省は、「検査結果の精度に問題がある」という解釈を示したが、はたしてそれだけでいいのだろうか。

私は、母集団の差を反映している可能性が高いと考えている。厚労省が検査した日赤の血液ドナーは、新型コロナウイルスの感染リスクが最も低い人たちだ。

献血ドナーの陽性率が低いと考えられる理由

献血ドナーはみずからの健康に留意する人が多いし、日赤は「新型コロナウイルス感染症予防のためのお願い」という文章の中で、「海外から帰国(入国)後、4週間を経過していない方」、「発熱や咳、呼吸困難など呼吸器症状のある方」に献血を遠慮してもらうように呼び掛けている。彼らの調査での抗体陽性率が0.4~0.6%と低いことも納得できる。

同じく、東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦教授のグループ、および大阪市立大学附属病院の調査結果が0.6%、1.0%と低いのも、彼らが調査対象としたのが病院の入院・外来患者であることを考慮すれば納得できる。多くは高齢の持病持ちだ。ステイホームを実践し、市中で新型コロナウイルスに感染するリスクは低い。

日赤と東大先端研の研究で注目すべきは、感染リスクが低いとされる人たちですら、1%以下ではあるが抗体を保有していることだ。抗体キットの感度が低いことを考慮すれば、実際の感染者はもっと多いかもしれない。これは由々しき問題だ。彼らは一体、どこから感染したのだろう。

ナビタスクリニックや千駄ヶ谷インターナショナルクリニックの受診者はまったく違う。一般クリニックで、受診者の年齢は若い。ナビタスクリニックの受診者の平均年齢は約30歳で持病持ちは少ない。わざわざ抗体検査を希望した人たちだ。5.9%、8.0%という値が出たことも納得できる。

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