コロナ抗体検査がまだ不完全でも絶対必要な訳 感染状況を推定しつつ感染爆発を防ぐために

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新型コロナウイルスの抗体検査は研究開発途上で問題も多い。アメリカでも、このことは問題となっており、ニューヨークタイムズは4月29日に「コロナウイルス抗体検査:あなたはその結果を信じることができますか」という記事を掲載している。この記事では14のキットを評価したが、信頼できたのは3つだけだったと結論している。

抗体検査の問題を指摘するのは、この記事だけではない。イギリス政府が2000万ドルを払って中国から輸入した抗体検査キットは、後に基準に満たないことが判明しているし、スペインも、正確な検出率がわずか30%という検査キット64万個を廃棄処分にしている。

ただ、それでも世界中が抗体検査を推し進めている。アメリカではアメリカ疾病対策センター(CDC)が中心になって、25の大都市、32万5000人に及ぶ抗体の推移を調べる調査が準備されているし、イギリスや韓国など他国も同様だ。抗体の限界を知りながら、一歩ずつ進めている。

感染者数を推定するには抗体検査に頼るしかない

なぜ、世界各国は抗体検査にこだわるのだろうか。それは、どんな感染症であれ、感染者数を推定するには抗体検査に頼るしかないからだ。特に、新型コロナウイルスでは、抗体検査は重要だ。感染しても無症状やごく軽い症状の人が多いのが理由にある。無症状や本当に軽症の人がPCR検査を受けないことも多いとみられ、PCRに基づく感染者数の推計は過小評価になる。

アメリカでは、4月3~4日にカリフォルニア州サンタクララ郡の住民3330人を対象に抗体検査を実施したところ、50人が陽性と判明した。この地域の人口は194万3411人で、抗体陽性率1.5%ということになる。

この地域ではPCR検査で確認された感染者数は956人だった。住民人口に占める割合は0.049%だ。1.5%の住民が抗体を有していたのだから、感染者の30分の1しか診断されていなかったという見方も可能だ。多くの感染者が見逃されていたことになる。

ただ、この調査については、参加者をフェイスブックの広告などで募り、白人富裕層の女性が多いなど批判されている。参加者にはバイアスがかかっており、この研究からサンタクララ郡の感染者を推計するには注意が必要だ。

では、他の調査はどうなっているだろう。下表は5月22日現在、公表されている世界各地の抗体陽性率の一覧だ。医療ガバナンス研究所の山下えりかが公開情報をもとに作成した。やや文字が読みづらいかもしれないが、世界中から0.4%~62.0%の抗体保有率が報告されている。

日本からも6つのグループの調査結果が報告されている。抗体保有率は千駄ヶ谷インターナショナルクリニックの8.0%から厚生労働省が日本赤十字社に依頼して調査した東北6県の0.4%まで大きな差がある。

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