そもそも再編集で元の作品をぶった切るのは、制作者にとってはとても抵抗があることです。私もバラエティ番組を制作していましたが、長い時には4時間以上の膨大な収録素材を、オンエアの時間の約45分までどんどん縮めていきます。
半分の2時間くらいまでは簡単にできるのですが、それからが大変です。おもしろくて切りたくない!という部分でも泣く泣くカットしなければなりません。それを繰り返し、おもしろさを凝縮し、これがベスト、これ以上のものは作れないと確信したものを誇りを持って世に出します。
私は総集編も作ったことがありますが、1カット1カットに作り手の思いがこもった作品を切り刻むのですから、本当に大変です。この気持ちは、実際にテレビ番組などを作った者でないとわからないかもしれません。
ですから再放送と聞くと、なんとなく手抜き感が感じられるかもしれませんが、けっして手は抜いていませんし抜けません。まず短くしてもストーリーがつながるように、どこをカットしどこにつなぐのかを決めますが、それを単につなぐのでは画(え)が飛んでしまうので、違和感が感じられないように別の部分から画を持ってきたり、業界用語で画先行(えせんこう)という次のカットに前のカットの音をわずかに残したりする、非常に丁寧な編集作業をしなければなりません。
「ビンジウォッチング」という再編集ドラマの楽しみ
さらにその後で、効果音や音楽、ナレーションなどを付け加えるMA作業をします。特に再編集でカットした前後をつなぐと、音がブツッという感じがしてしまうので前後のカットの空気音をうまく調整しなければなりません。
紹介したのはさまざまな編集技術のごく一部ですが、こうした作業を積み重ねて総集編は作られますから、まさにディレクターズカット版と言えます。「ノーサード・ゲーム」では主演の大泉洋さんのナレーションを新たに録っていますし、視聴者からみても、とても楽しめるコンテンツになりました。「ノーサイド・ゲーム特別編」の2時間放送は、それこそあっという間に終わっていました。
また「仁」は全22話を再編集し、3時間ごと6日間にわたる放送時間でしたが、まさにNetflixでビンジウォッチング、つまり一気見をしているのと同じ感覚で大きな満足感を得られます。これは多くの人に当てはまるようで、4月20日から26日のドラマの世帯視聴率と個人視聴率で「JIN−仁−レジェンド」26日(日曜14時)放送が6位、25日(土曜14時)放送が9位と2本ともがトップ10に入っています。
10年も前のドラマでしかも昼間の時間帯です。新型コロナウイルスで非常事態宣言が出されていたために、在宅者が多かったこともあるのでしょうが、再編集という新たな付加価値によって予想外の健闘をしたと言えるでしょう。
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