TBS日曜劇場の「再放送」がこんなにも緻密な訳 再編集で「イッキ見」、苦肉の策に新たな価値

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世帯視聴率も個人視聴率も、調査対象の世帯・個人のうちどれくらいがテレビの前にいたかという指標なので、どれくらい番組に集中していたかはわかりません。ところがそれがわかる新しい指標があります。TVISION INSIGHTS社の『視聴質』です。

視聴質は非常にユニークな調査で、調査対象家庭のテレビにセンサーを設置し、テレビの前に誰がいるのか(滞在度)、そしてその人の顔の向きを測定しテレビ画面を注視しているのか、それともスマホなどを見ながら見ているのか(注視度)を調べ、それを合わせて指標とするもので、番組がどのように視聴されているかという視聴の質をデータとして客観的に評価することができます。

そのTVISION INSIGHTS社の視聴質調査では、3月1日から4月19日に放送された再放送ドラマの視聴質ランキングに、「JIN−仁−レジェンド」4月18日放送が1位、19日放送が6位に入っています。また「下町ロケット・特別総集編」が3位、4位、7位に入っています。

新型コロナの感染拡大で人々の心が不安定になっているときに、「人の命とは」「人の命を救う医療の本質とは」「人がすべてをなげうってでも実現すべき生き甲斐とは」など、本質的で普遍的なテーマを掲げたドラマを再編集で濃密にしたコンテンツは、初めて見る人だけでなく、一度見た人でも十二分に楽しめるということを証明しました。

そして本格派のドラマは、再編集によって新たなコンテンツに生まれ変わり、視聴者に高く評価されるという新たなコンテンツ価値を創造することも証明したと言えます。

コロナ禍で生まれ変わるテレビドラマのアーカイブ

これまで地上波放送でのドラマ再放送は、手間をかけずに安定した視聴率を稼ぐという消極的なイメージしかありませんでしたが、再編集によってむしろ新しい番組として再生するという積極的なイメージを生み出すことに成功しました。

新型コロナ感染を乗り切った後のアフター・コロナ、ウィズ・コロナの世界では、これまでの産業のあり方、仕事のやり方、社会の仕組みも大きく見直され変わっていくことが予想されます。

テレビ番組についても、企画打ち合わせをリモートで行ったり、感染防止対策がされた制作過程の見直しなどに加え、再編集をすればゴールデンタイムでの再放送にも活用できるようなドラマのテーマの選び方なども模索され、テレビ業界にも変化が出てくるでしょう。新型コロナウイルスを災いとだけ受け止めるのではなく、それに後押しされてより良い未来に変化を加速するようにしたいものです。

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